ヤシガニ

君の名は。のヤシガニのネタバレレビュー・内容・結末

君の名は。(2016年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

とても繊細で、責任感の強い友人がいた。彼は新海監督の作品、特に『秒速5センチメートル』が好きだった。彼はいわゆる”デキる奴”だったが、その繊細さと責任感の強さゆえにつまづいてしまうことが多かった。
この作品の主人公2人も、とても繊細で責任感のある子たちだと思った。やらなくてはならないわけではないのに別人格のバイト先の仕事を勤めあげたり、悪口を言うクラスメイトをビビらせたり、ひいてはひとつの町の人々を隕石から救おうとする。若い観客はそこまでする理由を運命とか、時間を超えた絆とか、そういう言葉でキレイにまとめると思うが、心の汚れたオッさんは「別に、そこまでやらなくてもいいんじゃね?」と、投げやりに思ってしまう。
そして、それらの行動の結果も、うまくまとまりすぎている。至る過程は糸引のように複雑に、美しく編み上げられているが、どこかうまく出来すぎているような気がしてならない。まあ、だからこそ、アニメなのかもしれないが。
結局、繊細さと責任感による行動の末に、主人公の1人である男の子は就活で理想を語りつづけて失敗を続ける(本来の結末は主人公同士が再会することなのだが、個人的にはこのほうが結末として印象深い)。この結末を観たとき、冒頭の友人の、つまづきながらも一生懸命な姿を思い出したのだった。
できれば、今言っても遅いかもしれないが、「そんなに抱えこまないで、大らかにやろうや」と伝えてやりたい。そういう想いに駆られる映画でした。
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