あんがすざろっく

君の名は。のあんがすざろっくのネタバレレビュー・内容・結末

君の名は。(2016年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

劇場予告で観てから、ずっと期待していた作品。公開されてすぐに観に行きました。まずは観終わって率直な感想。
悪くはなかったです。
映像の美しさ、都会と田舎の風景の緻密さ、聞いているだけで心地よくなってくる岐阜弁、愛着の沸く
キャラクター達(谷花音が声をあてた四葉が個人的に出色だったと思う)。
身体が入れ替わった後の瀧(神木隆之介)の、女の子キャラは実にヘニャヘニャで(笑)、やっぱり役者さんだなぁ、と妙に納得してしまった。入れ替わりのもう片方、上白石萌音が演じた三葉の男臭い仕草、悪巧みを思いついた時の「ニヤッ」も、生き生きしていて楽しい。口噛み酒の描写も、何ともエロティック(それを売り出そうという四葉の発想力‼︎)。
全編通してではあるが、特に後半加速するSF設定は、真新しさはないものの、違和感はない。
アニメファンに留まらず、老若男女誰にでも受け入れられる作風は、やはり素晴らしいと思います。
が、しかし。
観終わった後、何だかしっくりこない。完全に腑に落ちない。
あの終わり方は、正しかったのか。駄目だという訳ではないが、他に着地点はなかったのか。何だか、綺麗にまとめられたという感じが否めないのだ。作中のあの事故は何処か3・11を想起させ、人々には忘れてはならない大事な人がいるということ、風化させてはいけないという思い、記憶に留めることの難しさ、忘れていくことへの刹那さがグイグイと胸に迫ってくる。
それだけに、あの事故を逆戻しし、なかったことにするのは正しいのか、という疑問が頭をもたげる。
それが出来るのなら、瀧と三葉の喪失感は永遠に続かず、5年で終わるのだ。
僕はそこに居心地の悪さを感じた。
加えて、キャラクター同士の関係性の曖昧さだ。
映画は決して全てを描けばいいというものでもないけれど、瀧と三葉のみの繋がりに執着し過ぎではないか。
三葉と父親のわだかまりはどうなったのか。瀧と司達の関係性はあれ程希薄なもので良かったのか。まずもって、瀧の父親を登場させる必要はあったのか。
流してはいけない、解決させるべき問題が多すぎた。
そしてもう一つ。僕が非常に残念だったのは、個人的な嗜好によるけれど、音楽にまるで魅力を感じなかったのだ。これが僕には致命的だった。
様々なシーンが思い出されるのだけど、そこに音楽が付いてこない。特にオープニングになんだか違和感が。テーマ曲がいきなりブツっと切れてしまう。よくよく振り返ってみると、居心地の悪さがここの時点で既に始まってしまっていた。
社会的現象を巻き起こし、普段映画館に行かない人達の足を運ばせた功績は大きい。
だけど正直な話、そこまで人々を惹きつける魅力は何だったんだろう、と僕は未だに答えを見つけられない。もう一度観たいか、って言われたら、僕は一回でいいかなぁ。

追記。一番引っかかっていた三葉
と父親の和解の下りが、アナザーストーリーで描かれていると聞きました。これを読んだら、悶々とした気持ちも収まるかな。


2019/9/7
↑そんな訳で、アナザーストーリーを読破後、再視聴。なるほどねぇ、三葉とお父さんのわだかまりは、こうやって解けた訳ですか。納得です。
改めて見て、やっぱり映像は綺麗ですよね。後半の展開も、分かっていながらハラハラ。あと、驚いたのは奥寺先輩を吹き替えた長澤まさみさん。上手いなぁ。
ただねぇ、僕は個人的に、どうしても音楽が…ダメでした。残念。
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