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何者のMovingMoviesのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
3.5
悪口は往々にして悪口を言っている本人にあてはまる
「あのひとは上司の顔色を見てコロコロ意見をかえる」と上司の顔色ばかりみている人が言う。
「あの娘は相手によって出す声の高さが1オクターブ違う」と相手によって出す声の高さが違う人が言う。
自分も同じことをしているかと思うと怖い。

傷つきたくない。例えば、英会話。極端にいうと英語が話せるようになってから、外国人と話したいみたいな転倒。一度も失敗せず、恥もかかずに成功したい。岡田 将生演じる隆良がはまっている罠に似ている。自分は就活には向いていないと予防線をはりつつ、自分は人とは違うのだという優越感。

佐藤健演じる拓人は、銀次と隆良が似ているといい、サワ先輩は銀次は拓人と似ているという。私は、拓人と隆良が似ていると感じた。
どこかで勝負を避けている。一生懸命に立ち向かっている人たちに優越感を抱くことで自分を支えている。それを口にしているのが隆良で、そうしていないのが拓人ではなかったか。

企業に就職する私自身もそうだし、多くはルーク・スカイウォーカーやダースベイダーではなく、スターウォーズの白い人たち「ストーム・トゥルーパー」であり、ライダーや怪人ではなく、ショッカーの戦闘員なのだという現実。自分で思っているほどあなたの個性は際立ってはいない。

就活から見れば拓人の「影」、演劇の人生からみて「光」といえるのが銀次なのだろう。そのようにありえたかもしれない自分。パラレルワールドの自分のような。

頭の中にあるうちは全部傑作なのだという言葉は、ブーメランのように自分へと返ってくる。