りっく

レッドタートル ある島の物語のりっくのレビュー・感想・評価

4.1
レッドタートルとは一体何なのか。それは生き死にを看取る番人のようなものだと思う。難破してたどり着いた無人島から脱出しようとする男。だが、レッドタートルは彼の脱出を阻もうとする。だからこそ、男はレッドタートルに怒り、ひっくり返し、絶命させる。後悔してももう遅い。しかし、そこから突然女性が甲羅を破って現れ、やがて子供を作り、親離れし、そして自分が息をひきとる。

きっと彼が島を手作りの筏で脱出しようとしても、海が荒れ狂えば海のもずくとなり、距離的にも陸地にたどり着くことは不可能であることをレッドタートルは知っていたのだろう。だからこそ、彼に絶対に経験できない「家庭を持つ」ということを体験させてあげたのだろう。

彼はどこかのタイミングで既に死んでしまったのかもしれない。「3.11」を想起せざるを得ない津波が島を襲い、その抗えない気まぐれな自然の猛威に飲み込まれる家族。だけど、だからこそ家族の素晴らしさを本作は静かに訴えかける。美しい夕日に輝く海、夜空に輝く満天の星、海鳥の大群が飛んでいく光景。カニや産まれたてのウミガメなど、小さな生き物がちょこまか動く様は可愛らしく、ユーモアも忘れない一方で、壮大な生き死にの物語に浸る。
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