人々の表情の作り込み、動きにとにかく説得力があるので、モブである村人一人ひとりまでキャラクターが立っている。
ストップモーションだからすごいというだけで終わるのではなく、あくまで求める映像表現を生み出すための手段としてストップモーションを選択しているのだという矜持のようなものを感じる仕上がりだった。
魔術表現が多彩でどれも美しい。三味線をかき鳴らした瞬間折り紙がざっと広がる絵は回数を重ねても見るたびに魅了される。
中盤のストーリーは少々トントン拍子に感じたが、イメージ元であろう浪曲や講談のテンポ感が出ているという面ではいいのかもしれない。個人的にはもう少し猿、クワガタ、クボの三人のやり取りを見ていたかったが。
月の帝は表情が読み取れる変身前のデザインが好きだったので、人型のまま戦って欲しかった。せっかく強みが表情なわけだし、序盤の折り紙シーンのように刀で一騎打ちでもしてくれればよかったのに。
もっとも、この辺は好みなのだろうが。