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KUBO/クボ 二本の弦の秘密のKuutaのレビュー・感想・評価

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016年製作の映画)
4.1
今年の映画鑑賞は今作で終わろうと決めていました。

この映画は全て「両親を失った折り紙好きの少年が、自分の心を救うために考えた妄想」なのかもしれない。人には寿命があり、記憶にも限界がある。そんな不完全な生き物だからこそ物語を必要とする。クボが折り紙を操る様は無機物に命を与えるアニメーションという表現そのものだ。今作の虚構性を補強するように、エンドロールはこの映画がストップモーションアニメ=手作りの紛い物であると明示する。

太陽は浮き沈みを繰り返す=生死と寿命のある現実の人間の世界。月は日中太陽に消されて見えない、虚構の黄泉の世界を象徴する。この対比は「かぐや姫の物語」を強く連想する。昼と夜が交わる、日常と非日常(ハレとケ)が往来する「祭」の日に三途の川を渡って妹が飛来するシーンはホラー演出も決まっていて素晴らしい。

現実を見る目を捨てて、虚構に生きるのではなく、クボは両親の思いを背負いながら音楽を奏でる道を選ぶ。「1つの物語が終われば、次の物語が始まる」。ブリグズビーベアや今作に共通するテーマだ。物語に引きこもって逃避するのではなく、母親が終わらせられなかった物語をクボの手で締めくくる事で、次の物語を始める。この輪廻をお盆や灯籠流しに重ねつつ、2本の弦を三味線に変化させる発想に脱帽。来年も良い映画をたくさん見たい。82点。
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