螢

神様メールの螢のレビュー・感想・評価

神様メール(2015年製作の映画)
3.7
ポップ、ダーク、リアル、シュールの四つの配合バランスが絶妙な、超ハイセンス作品。

「ある日突然自分の寿命を知ってしまったら、人は残りの人生をどう過ごすのか」

そんな永遠の大課題を、超絶大胆奇抜なシュール設定、主役少女のキュートな魅力、ポップな映像をベースに、厳しい現実や社会問題、毒も闇もたっぷり含んだブラックジョークを織り交ぜながら、軽やかだけどしんみり考えさせて見せてくれる。

ブリュッセルのとあるアパートの一室には、本物の神様一家が住んでいた。
全能の神は、慈悲深いどころか、自分が作ったはずの人間たちに試練とは言えない様々な悪業を働いて傷つけることで、日々の退屈を紛らわしている。
そして、家族に対しては、完全にDVとモラハラの毎日。
神の実態は、正真正銘のクズオヤジだった。

神の娘で10歳のエアは、そんな父へ反発から、父の力の源であるパソコンを使って全世界の人々に各人の余命を知らせるメールを送ってしまう。
エアは父に対抗するため、「兄」の助言を受けて、余命騒動に混乱する世間の中から6名を「使徒」に選んで奇跡を起こして「新・新約聖書」をつくろうと、街へ家出する…。

選ばれた使徒たちは、年齢も、性別も、境遇も、抱える問題も、寿命も様々。
だけど、彼らが体内に秘めていた孤独や鬱屈は、どことなく、似通っている。
彼らは突きつけられた寿命に初めはショックと混乱を隠せなかったけれど、エアとの接触を機に、長年胸に秘めていた思いと向き合って行動を起こし、そして、手を取り合って…。

もう、本当に、誰か見て欲しいです。
そして、十人十色だろう感想を聞きたいです。好評でも酷評でもいいので。
むしろ、半々くらいかな、と予想。
それぐらい、あまりにも大胆奇抜。
なのに、ハイセンス。
(多神教で神様も人間並みに自由な神道に馴染んだ日本はともかく、キリスト教の強いヨーロッパで無事に受け入れられたのか、ちょっと気になりますが…)

受け付けない人もいるとは思いますが、ツッコミどころ満載のありえない設定は、コメディとしても、十分楽しめると思います。
エアの兄の設定とか、あのカトリーヌ・ドヌーヴ演じる金持ちマダムが衝撃の恋に落ちる相手とか…。

私は観終わって、自分の余命がわかってしまったらどうするかの答えはまだ出なかったけど、なんだか前向きな気持ちになれたので、個人的にはオススメな作品です。
螢