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ダンケルクのkrhのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
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得意ではない戦争ものというのもあって、まあまあの期待値で観たら、はるかに超えて良かった。
何はともあれ、必要最低限の描写で何もかも伝えてしまう力量に圧倒されてしまう。(CGをほぼ使わない)映像の説得力、体感しているようなカメラワークや音の入れ方、劇伴の煽り方、単語ひとつで多くを語るセリフ。
一週間と一日と一時間を混乱なく収束させているのもあって、自然と没入することができた。

ドイツ軍の描写が戦闘機のみで(ラストさえぼかすほど)、徹底的に画面に映さないのが良かった。余計な感情を持たずに済み、生き抜こうとした彼らにだけ意識を向ければよかった。

兵士たちの集団の眼差しがとても印象的。
小船を見下ろす、じっとした視線の束。
飛行機を見上げるときの、バラバラ…バッというあのタイミング。感嘆。

逃げても逃げても、生きるか死ぬかの危機は続く。終始息が詰まる。それを抜けて抜けて生き抜いて、観ている私たちももう彼らの気持ちになっている。
ラスト、やっとホームに戻ることができたものの、うんざりしきっているところに、新聞の「降伏しない」「これからも戦い続ける」には、(まだこれが続くのか…)と個人的には本当にしんどくなってしまった。
生き抜いて良かったと喜ばれても、それほどは嬉しくない。「生き抜いただけだ。」ひたすらに辛いのが長引くだけなのだ。
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