CG全盛の最近の映画界において失われつつある「本物で撮る力」が本作は観客に迫って来ます。
戦闘機も船も本物の迫力で、その昔にデビット・リーンの作品などで馴染んでいたスクリーンで本物に接するという感覚が蘇って来ます。
2017年8月23日に『永遠の0』を撮った山崎貴とノーランが対談したところを以前少しだけ見ましたが、希代のCGの使い手との対談はやはり本物で撮り切ることには大きな意味があるのだと感じさせられました。
元々映画自体が本物ではないので、その中の物が本物なのかウソ物なのかは大して重要ではないのではないか?と思う向きもあるかもしれませんが、観客心理として「コレはウソでしょ」と思って観るのとそうでないのと、大きな差があるのではないでしょうか。
加えて本作にはサイレント映画に近い感覚が濃厚です。
役者も本物に対峙して演技していますし、セリフの無いシーンも長いし、ハンス・ジマーの音楽がセリフの無いシーンでズッ〜ト鳴っていることも多くて、これはどうしても白黒サイレント映画を想起させます。これを可能にさせるには画の持つ力が強くなくてはなりませんがノーランはこの点全く問題なし。戦闘機による空中戦はもとより海上及び地上における戦闘シーンの画の持つ力強さは、仮に音楽の助けが無くても充分な迫力に満ちていました。