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映画 聲の形のtakatoのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.8
いつ以来だろうか京アニ作品で涙を流したのは…。「君の名は」で荒んだ心を癒してくれたからだろうか?、長年の持論だった京アニは良い原作と組めば面白い作品が出来るという考えを大肯定してくれたからだろうか?。それらもあるかもしれない。しかし、なにより作品自体が持っている力に唸らされた。

 いじめや障害が関わってくると聞いて、「桐島~」のような嫌~な感じがあるのかと覚悟していたが、京アニ風味ということもあるのかそこまでハードではない。それでも学校という空間における同調圧力とか、屑みたいな先生とか、やたら二次元では綺麗で素敵な場所として描かれがちな学校という場所の裏面もちゃんと描いているのが偉い。現実的であれ、とは言わないが一面的で薄っぺらい理想化より遥かに優れている。

 まず絵的な魅力が凄い!。流石の京アニクオリティーな撮影、美術の妙が、良質なストーリーと立ちまくりなキャラと合わさることで素晴らしいハーモニーを奏でている。透き通る水の輝き、画面を彩る小さな花の瑞々しさ、田舎やファンタジーな状況などに場面を持ってこなくてもこんなに美しい背景が出来るじゃないか!。ありふれているような、現実的で、実在感のある場所を、強化されたより美しい現実のように描く。これって新海さんがやってきた事のような…。

 キャラたちも脇の人物まで含めて絵的にも、キャラの内面的にもしっかり立たせる努力をしているから思わず好きになってしまう。それとやはりプロの声優さんって上手いなぁ~と感心させられた。特に悠木さん演じるユズルちゃん。最近どちらかというと低い声のキャラにシフトしがちな悠木さんで、ここまでハマっているのは初めて(男の子だったらもっと萌えたんだけどなぁ~)。

 ストーリーに関しては、未熟だった主人公が、試練を経て成長するという王道の型をしっかり描くのがいかに重要かよくわかった。未熟で、不器用で、でもそれを自覚して努力しようとしている主人公だからこそ共感できるし、その成長も感動的になる。特に顔を上げず、周りの声も聞こえないという主人公の状態は、私のような駄目人間には痛切に響く。隙の無い脚本か、と言われれば正直多少不満点もあった。メガネの美人ちゃんが反省しないのはどうかなぁ~とか感じたが、一番は主人公、特にヒロインがちゃんと自己肯定をすることができるシーンが欲しかったという点。でも、それらなど些細な問題にすぎぬ。主人公が、ヒロインが、脇役が好きになり共感できるから、最期のシーンで次々に映るみんなの姿を見て、主人公と同じくポロポロと涙が零れてくる。今年ベストクラスの傑作!。
#filmarks2016
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