凄まじいものを観てしまった気分だ。
妙にリアルで、肌にまとわり付く悪夢をみた時のような。
目の前で人身事故が起きたような、忌まわしく一生晴れない想いのような。
静かに着実に、近づいてくる、
飢え、恐れ、欲望、猜疑心。
見えぬところで広がる、
人間の弱さ。
壊れて行く世界の中で、
掛け違えた出鱈目が、
何故か綺麗に収まってゆく恐ろしさ。
色も音も、静かな映画。
ゴア表現はほぼなく、
これ見よがしな驚かせシーンは皆無。
故に、恐ろしさが際立つ。
ラストシーンの照明も、
一般的な派手さは皆無だが、
だからこそ、逆説的に、狂おしいほどに、
狂気と恐怖に溢れている。
宗教と信心と運命という点では、
スコセッシの『沈黙』とセットとなる作品だと
強く感じた。
〜余談〜
『スプリット』のアーニャ・テイラー=ジョイが美しすぎる。透き通るような白肌。無垢の体現。絵画のよう。