クリフハンガー的に物語の風呂敷を広げる手法が天才的に上手い (ただし畳むのはそれほど上手くない) J・J・エイブラムスが仕掛け人のクローバーフィールドシリーズには、他篇との世界観的な繋がりが示唆されながらも、それぞれ独立して楽しめるSF映画の楽しさがある。
2作目となるこちらも、POV視点のモキュメンタリー演出だった1作目と大きくスタイルを変えながら、(ほぼ) 密室スリラーとして楽しむことができた。
主演のメアリー・エリザベス・ウィンステッドはキャリア初期からホラー映画への出演が多く、スクリームクイーンとして有名になっていった俳優だが、絶叫する演技ばかりでははなく、重い緊迫感の中での精神的な揺れのような微細な部分も演じる力量がある。
本篇の大半は地下室、登場人物はほぼ3人という相当に限定された舞台設定で、その空間のキーパーソンを演じるジョン・グッドマンの不気味な役づくりには圧倒される。人間の内面に潜む暗黒面や不安定な精神性を、漫画的ではない実存感のある演技で体現しており、まさに変幻自在の名優といった感じ。
もう1人の人物も含めて3人の間で行われる心理的な駆け引きには、画的にはとても地味ながら、終始ドキドキさせられる。
終盤でのあまりにも劇的な超展開には驚かされるが、そうだったこれはクローバーフィールドだった! と思い出す興奮がある。
終劇直前の画づくりの構図は、映画本篇の後の物語がどう展開するのかの想像が広がる演出があり、とても決まっている。
映画全篇を通して、監督を担ったダン・トラクテンバーグの演出のセンスの鋭さを感じ取ることができる。
シリーズで物語がつながっているようで微妙につながっていない、だから前作や次回作を気にせず単品で楽しめる、でも映画の精神性としてはやはりクローバーフィールド、という特殊なシリーズではあるが、個人的には1・2・3作目のどれも違った魅力のあるSFスリラーだと感じている。
この先に4作目が製作・公開されるとして、ほとんど予備知識なく映画館で1作目を鑑賞した時の衝撃的な体験を更新することは難しそうだけれど…
https://www.shojitaniguchi.com/cinemareview