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泡立つ青春のkaomatsuのネタバレレビュー・内容・結末

泡立つ青春(1934年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

実に愉快な、1934(昭和9)年製作のプロモーション用映画だ。

主人公(?)が友人と都市対抗野球を観戦している。負けたほうのチームを応援していた友人をなだめつつ、銀座の老舗ビヤホール(現在の銀座ライオン)に立ち寄り、とりあえず乾杯し、ビールをひっかける。満員のお客、歌えや踊れや、みんなやたらと陽気で楽しそう。そして主人公の自宅で、再び乾杯。主人公の息子が「ビールはどうやってできるの?」と尋ねると、ビール会社に勤務する友人が、ビールの成り立ちや工場での製造過程、輸出状況などのうんちくを長々と話し始める。説明が終わり、ラジオのスイッチを入れると、「ビールよいもの」という歌が流れ、画面はなぜか、その歌に合わせて踊る芸者たちのシークエンスに飛ぶ。最後に芸者たちによる「オ」「ワ」「リ」の人文字が上空から映し出されるところで、チャンチャン。

ひたすら楽しい51分の本作は、現在のアサヒビールやサッポロビールの前身、大日本麦酒のプロモーション映画で、監督はマキノ正博(雅弘)。長らく幻の作品となっていたが、1993年にサッポロビール埼玉工場にて、本作の35ミリフィルムが発見されたという。いつだったか、神保町シアターで酒にまつわる映画を特集上映していたとき、たまたま特別にオープニング上映されていたのが本作だった。サッポロビール提供ということで、なんとビールまで配布され、上映前に館内一同でカンパイとなり、プシュプシュ缶を開ける音と、ホップの匂いに包まれながら鑑賞。映画はことのほか面白く、ビヤホールのシーンでは、おっさん客ばかりがうじゃうじゃ集ってビールを飲み、歌い、踊る。ウェイトレスたちは、歌に合わせてステップ踏んでて可愛らしい。そして何と言っても、パッと映像を観てすぐに分かるほど、今から84年前の銀座ライオンが、現在とほぼ同じ内観や内装であることにビックリ。この作品、マキノ正博監督のオペレッタ時代劇『鴛鴦歌合戦』の限定盤コレクターズ・エディションDVDの中に、特典映像として収録されているようだが、まさに『鴛鴦歌合戦』につながるマキノワールドの原型が見て取れる、きわめて貴重な作品と言える。ポチろうかな…。
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