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シング・ストリート 未来へのうたのkmtnのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

80sのポップミュージックが好きなので(実は劇中で兄貴がディスってたフィル・コリンズが大好きなのだ)、
劇中歌の良さには思わず親指が立つ。
僕は80年代については後追い世代だから、分からない部分の方が多いんだろうけど、おそらくど真ん中の世代の人達にとっては感涙ものなんだろうな。


ジョン・カーニー監督は、前作「はじまりのうた」で冒頭の三度繰り返す天丼展開の映画的な面白さ、
ネット配信時代、Spotify時代的な音楽との付き合い方を描くなど、
映画にも音楽にも真摯な人だと思っていたが、その源流は監督自身が青春を送った80sにあっただと知る。


前作でもそうだったんだけど、
この監督は音楽が段々と形になって行くまでを描くのが上手い(監督自身がバンドマンであったのが大きいと思う)。
一番出だしで、親たちの喧嘩の声を聴きながらギターを一人で弾いていたコズモ。
それがダーレンが加わり、エイモンが加わり……最高っ!!って感じです。


また曲が良いですね。
ちょっとコズモのボーカルが(特に後半のバラード曲)80年代っぽくないが、
ゲイリー・クラークと監督製作の、80sのツボをよく抑えたアレンジは今聞いても、新しく響く(まさに未来派!)。


あと劇中で何度か言及される「未来派」と言われるジャンルであるが、
音楽好きであれば、当然シング・ストリートの音楽生は、ポストパンク、ニューウェイブ等であると感じるはずであるが、
コズモは頑なに「僕らの音楽は 【未来派】です」と言い張る(もちろん、そんなジャンルはない)。
後の時代になると、やたらとどこかの枠にカテゴライズしたくなるわけだが、
その渦中にいる人間ってのは、別に「僕らはポストパンクです!」なんて思って音楽をやってるわけじゃないんだよなあ。
なんか当時の生の声って感じがした。


ヒロインを演じる、ルーシー・ボイントン。
この人、メイクと髪型のせいもあるんだろうけど、すごい80年代ってぽい美人だなあ。
出演作を見ていると、クイーンの伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」にも出演してて、80年代御用たし女優なんかなって感じでなんか面白い。


ちなみに今作はアイルランドについての映画ともいえるが、
アイルランドのミュージシャンといえば、もちろんU2。
そしてU2といえば社会に問題提起をするような楽曲群であるが、
アイルランドという国はIRA、貧困……とにかく数多くの問題を抱えた地域である(ジョン・レノンの「ザ・ラック・オブ・ジ・アイリッシュ」を是非聴いていただきたい。ジョンもやはりアイルランド系)。
今作はかなりライトであるが、そこら辺にも触れている。
そしてその役を担うのは、他ならぬ主人公の兄貴なのである。まるで彼は、ロックのジーザス・クライストだ。


というわけで、相変わらずジョン・カーニーさんの音楽愛あふれつつも、
監督の出身地のアイルランドについてもしっかり触れた、
娯楽性と社会性がしっかり織り込まれた良作でした。おすすめ!!!
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