半兵衛

不滅の女の半兵衛のレビュー・感想・評価

不滅の女(1963年製作の映画)
4.2
製作から五十年たった今鑑賞すると過去と現在を行き来する劇を逸脱した物語の構造や編集、長回しを活用したカメラワークはリピーターたちが盛んにやっているので刺激は薄くなってしまっているけれど、それでも舞台となるトルコの美しい景色とこの作品の肝である謎の美女を演じるフランソワーズ・ブリヨンの浮世離れした美しさにより品のあるアートスティックな作品として堪能できた。

謎の女性に導かれていく男のドラマもトルコの流麗な風景の裏にあるかつてのこの国に連れてこられた女性たちの悲劇を徐々に浮き彫りにさせていき、女性が時折覗かせる過去の発言や行動と合わさってその素性がおぼろげながら伝わってきて過去に縛られた女とそれを助けようとして出来ない男のメロドラマとしてもよく出来ている。

彼女のまわりにいる謎の男たちの存在、物語がいくら進んでも冒頭の部屋へと戻っていく展開、彼女が自由の象徴としている自動車…それらのミステリアスなパーツがやがて一つに溶け合い、ラストへと結び付いていくのに心が震えた。それらの謎はすべては明かされないが、主人公や女性の側にいて彼らの動向を監視するように見ている老人が二匹の犬を連れていて、女性がその犬の鳴き声にひどく怯えるというのは地獄好きな人にはピンとくるはず。
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