『俺たちはコインと同じ、表裏一体、
ふたりで一つだ。』
1990年代にフランスの有名サーカス団で活躍していた"ホワイト&ブラック道化師🤡コンビ"『フティット&ショコラ』の物語です。
テーマは肌の色が違う二人の友情と、
スターダムにのし上がり成功をする二人、そしてショコラの人生です。
でも、その裏には"人種差別"と言う大きなテーマも流れているのでした。
フランス北部にある小さなサーカス団🎪"デルヴォー座"で、
人食い人種の王"カナンガ"を演じる黒人ラファエルは、
パリで名を馳せながらも落ち目の道化師"フティット"に誘われコンビを結成しデルヴォー座を盛り上げます。
噂は広まり、サーカスに客として訪れたパリのサーカス団支配人ジョセフに勧誘され一流サーカス団へと舞台を移し、二人は一気にスターダムへと駆け上がって行きます。
前半パートは二人の成功する様が、
後半パートでは名も売れ財を得たショコラがギャンブルに溺れ身を落とし、
コンビを解消し俳優への道を選ぶ様が描かれていました。
フティットは頂点とドン底を知る道化のプロだけに、
常に冷静沈着で芸を磨く事を怠らず自他共に厳しく、自制心を忘れません。
対するショコラは初めて得る富と名誉に舞い上がり、大切なものを見失い身を滅ぼし、
それでも尚、自分の才能を信じ突き進みやがて大切なものを知る事になります。
素晴らしい才能と、純粋に信じる心を持つショコラの気持ちに陰りをもたらし、それを阻む環境には、
人種差別と言う人々の意識と、
幼い頃に植え付けられた奴隷制度下の小作人と言う立場や意識、
目の裏に焼き付いて離れない父の哀しい姿があるのだと思いました。
満遍の笑みでフティットに蹴られる姿を喜び笑う観客の反応にも、
人々の心の底に潜む白人優位の差別意識が観て取れます。
ショコラと言う名のオーギュスト(愚かな道化師)を演じる事に苛立ちと悲哀を感じていたラファエルを更に哀しませたのは、
喧嘩をした時に発せられたフティットの"俺が声を掛けてやったから"と言う見下した様な発言でした。
"いつまでも白人に尻を蹴られていて良いのか?"
"誰もしない事をしろ!風穴を開けてこそ真の芸術家だ!"
と牢で知り合った黒人のビクターに背中を押され、フティットとは道を違えラファエルは俳優への道を選ぶのです。
そして感動を呼びカタルシスを感じるラストが秀悦で思わず涙が溢れます。
自分的には、サーカスのあのワクワク感と二人の楽しそうな演技が好きで、
何時迄も観ていたいと思いました🤗
フティット役の『ジェームス・ティエレ』が『チャーリー・チャップリン』の息子と知り驚きました。
そしてショコラ(ラファエル)役のオマール・シーの演技が"最強のふたり"同様に味のある素晴らしい演技で魅せられました。
奴隷として生まれ育ち、サーカスでも低く見られて来たショコラ。
『俺たちはコインと同じ、表裏一体だ。
ふたりで一つだ。』
とフティットと手のひらを合わせた瞬間が、
きっと、ショコラ(ラファエル)の人生の中で一番輝いた時だったのでは無いでしょうか。