MikiMickle

スイス・アーミー・マンのMikiMickleのレビュー・感想・評価

スイス・アーミー・マン(2016年製作の映画)
4.0
CMディレクター出身の監督コンビ、ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート(通称:ダニエルズ)のコンビの初長編作。
2016年のサンダンス映画祭で最優秀監督賞を受賞。シッチェス・カタロニア国際映画祭では作品賞&主演男優賞のW受賞。ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭では観客賞受賞。


海に漂うHELPと書かれた小さな小舟。
海岸に漂流したと思われるハンク。
彼は絶望から自ら命を絶とうとしていた。
ちょうどその時に漂流してきた人影。
ハンクは自 殺 するのをやめ、必死で蘇生しようとするも死んでいて…… ダメだ…やはり、もう一度、死のうとまた首を吊ろうとする……
しかし、死体のお尻からはガスが吹き出てきて動き出したのだっ‼
ハンクは無我夢中でその死体にまたがり、ジェットスキーの如く、脱出する‼‼ オナラジェットスキー‼‼(笑)

しかし、気を失い…
辿り着いた先もまた海岸だった……
またも絶望に陥るハンクだが、命を救ってくれた死体を放っておけず、その死体を背負って山を登り助けを求める……

雨風を防ぐ為に入ったゴミの捨てられた洞穴。打ちひしがれるハンクの目の前で、なんとその死体はポットのように口から貯めた雨水を出しはじめたっ(笑)……
そして、喋り出す‼‼
彼は名前はメニーだと。しかし、生きていた時の記憶は全くない。というか、死んでるけど(笑)

意気投合した男と死体は、無事に故郷に戻る事ができるのか?‼

なんなんだ、この設定は?‼と(笑)
死体なのに喋るし、
しかも、メニーはまるで十得ナイフのように様々な機能が‼(愉快な他の機能は見てのお楽しみ♪)

心に闇を抱えるハンクと、アーミーナイフ的な死体のメニー。
その様子は奇妙極まりない。死体メニーは、まるで思春期の子供のように欲望を出す自由人だし。
ネガティブハンクは、廃材で夢と架空現実を作り出す。
夢いっぱいで心ときめきすぎる‼

とにかくかなり奇妙な設定だけれども、それを上回る奇妙な展開が次々と起こる。

絶望のどん底からメニーに出会ったハンクは、
その生活の中で、段々と生きる喜びを感じ、成長していく……

全編にある奇妙だけれども美しい下ネタ。
下ネタで涙が出たのは初めてかもしれない。

後半の真実パートでの残酷さは、人それぞれが持つ美と負の局面を見せつけられる。美と生と希望が嫌に変わる瞬間の怒涛のシーンでくらう現実のパンチは胸をえぐる。
生きていると、見える自分のダメな所も、他人からは受け入れられない事も、多々ある。 人が嫌悪するもの。 恥ずべき事…… しかし、それは、誰しもが持つもの。あなたにも。私にも。

ある意味でネクロフィリアでありブロマンスでもある2人の関係も、嫌悪される対象の象徴的な表現のひとつ。
突拍子もない展開や下ネタは、真実を隠すオブラートでありつつも、その根底をえぐり出すものであり、本質でもある。
そして、深い意味での“遭難”という迷いと苦しみからの、求め続けた故郷という自我と愛と容認。
ダメでもいいじゃないか。それを認めてくれる映画。この先、もし生きる事を悩んだ事があったとしたら、この映画をみたい。大袈裟だけれども。
変な流れと、変な着地点とを存分に楽しめる映画です♡

ハンク役は、私が心の中で呼んでる「ミスター顎なしヘタレ」のポール・ダノ。相変わらずのダメダメ兄ちゃんっぷりの安定感でw
死体メニー役は、「ミスターハリポタ」のダニエル・ラドクリフ。ハリポタ後に様々な役にチャレンジしてるけど、それは無理やりなイメージ払拭ではなく、本人がこういう変な映画が好きなんだろうなという一貫性があるので、どれも見ていて非常に楽しい♪ どちらも良い俳優だなぁ(﹡ˆωˆ﹡)♡
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