リリー

パターソンのリリーのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
3.8
バス運転手であるパターソンの、判で押したような毎日を淡々と描いているにも関わらず、全く退屈さを感じない不思議な映画です。判で押したような、とは言っても、風変わりで美しい奥さんが、日中に部屋の壁を塗り替えたりカーテンを替えたりして模様替えに熱中しているので、毎日部屋の様子が帰ると変わっています。奥さんの気まぐれにも、あまり美味しくない手料理にも顔色も変えずに対処します。だから、奥さんがあるものを買ってとねだった時は、この人は利用されていないか、とパターソンの身をすごく心配してしまいました。
また、バスの故障とか、行きつけのバーで男女の緊迫感のある諍いなども起きて、ちょっとした劇的な出来事にも遭遇します。でもパターソンは、常に冷静です。
唯一彼の顔色が変わったのは、終わりのシーンで愛犬があることをやらかした時だけです。それでも決して感情的になることなく、また淡々と日々を過ごすところがかえってとても気の毒に映ります。
観終わっても、パターソンの幸せを切に願う気持ちが残りました。
リリー

リリー