みんと

オルメイヤーの阿房宮のみんとのレビュー・感想・評価

オルメイヤーの阿房宮(2011年製作の映画)
3.9
『地獄の黙示録』の原作者ジョゼフ・コンラッドの処女小説をシャンタル・アケルマンが脚色して映画化。

東南アジアの奥地を舞台に娘(ニナ)を溺愛する父親(オールメイヤー)の狂気と破滅が描かれる。

青みを帯びた映像にニナの黒い肌がことのほか映える。とりわけ、寄宿学校から外の世界へ出てタバコを吸うシーン、そして颯爽と歩くシーンが印象的。
長回しで捉える横からのカットはアケルマン作品によく登場するお約束ショットでもある。

オリエンタルムード、ジメッと湿気を帯びたマレーの風景美。流れる音楽もドア越しの構図も素晴らしい。
ニナのエキゾチックでミステリアスなルックスにもゾクゾクする。詩的な台詞もセンスを感じる。

そして、なんと言ってもラストカット。
じっくり時間をかけて捉える、オールメイヤーの表情の変化が圧巻だった。

明日には忘れる
裸足で歩くな
ケガをする 蛇に噛まれる
裸足になるな
ぬかるんでる…

歪んだ父性のなんと哀れで切ないことか。

通して、掴みどころのない不思議な世界観が物語の奥行きを感じるしいろんな捉え方が出来る作品だと思う。

ともあれ、『囚われの女』同様、スタニスラス・メラールのイラッとするような繊細な演技に脱帽。あれから11年の年月を経て囚われ演技に磨きがかかってた。
みんと

みんと