このレビューはネタバレを含みます
晩年の黒澤明の映画は初めて観た。
面白かったかどうかはよくわからないけど、馬鹿みたいに明るかったり、ただ楽しそうだったりするところが、なんかすごくよかった。
全盛期のような徹底したリアリズムと起伏のあるドラマは全く描いてない。愛猫の失踪以外はずっと明るい。愛猫の失踪だって、客観的に見ればとてもかわいい事件。
どこか理想郷のような、寓話的な感じもある、不思議な映画。
興行とか、クオリティとか、あんまり考えて作ってないんじゃないかな。そんなの考えなくても、みんな観てくれるような監督ですもんね、もうこの時点で。
これがもし新人の、誰も知らない監督の映画とかだったらあんまり目にも止まらないし、考えないかもだけど、あの黒澤明が、晩年にどんなことを人生に思ったか、考えたか、望んだか、彼の心の内面をそのまま形にしたような感じがおれにはします。
そういう背景がこの映画を深くしてくれてるように思う。