やや

ブラック・スワンのややのネタバレレビュー・内容・結末

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

血やナイフ、暴力的表現などは目眩がするほど苦手だ。
わかっていてもどうしても気になって観てしまい、いつまでもどうしても忘れられない作品がある。
それがこの『ブラックスワン』だった。

ささくれがどこまでも剥けてしまうような、爪と一緒に指を少しだけ切ってしまうような、想像できる範囲の痛々しいシーンが頻繁にあるので観ていてなかなか疲弊する。

トマのやり方は気持ち悪いけど、内なる衝動がなければ完璧に踊ったとしても表面だけの演技になる事はとてもよく理解できる。
白鳥にしかなれず堕ちていき、最終的に黒鳥の衝動性を引き出したニナの二面性を見事に演じきった役者さんも素晴らしい。

どこまでが現実でどこからが幻覚なのか?
痛みを感じながら、観ているこちらもわけがわからなくなっていく。
けれど何かに入れ込み、重圧に耐えきれずに文字通り命を懸けて狂気的になっていく様は恐ろしくも美しく、惹かれてしまうことに気づかされた。

だからこそ10年前に視聴し、もう二度と観たくないと思うと同時に、何度も何度もその狂気を思い出してしまう。
心に深く小さなトゲが刺さった感覚。
その痛みとともに『ブラックスワン』の存在を、ニナの最後の表情を、私はおそらく一生忘れることができないのだと思う。
やや

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