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ブラック・スワンのcocoのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
4.5
母親の励ましもオルゴールのバレリーナも呪いみたい。

華やかな世界のクソセクハラプロデューサー。

支配されることがニナの日常なんだと思うととても苦しい。

誰かがニナとリリーは親友になれたかも知れないのに、と呟いてたけど、それは無理だと思う。ニナにとってリリーは眩しすぎる。
ニナは向き合えないものが多すぎる。鏡に囲まれながら、自分の背中は見えない。
鏡の前で踊らされながら、誰かの期待する自分を演じる。

ニナは心の中に安全な場所が一つもない人だった。
彼女の安心は支配とべっとり癒着している。
支配から逃れようとするほど孤独になる。
自分を安心させてくれるルーティーンは、自分を支配しようとする母親がくれたオルゴール。

求道的な人物に対する憧れと不可解さがある。
TARもそう。
私はこういう人物たちの苦悩が決定的にわからないんだと思う。
できる人は苦しいんだね。
生身の人間がすり減っていく様子をエンタメにし、
それを消費するグロテスクさを遠景にして幕が下りていく。
すり減ることをエンタメにできるのは、それが他人だからだよな。
そして「作り物ですよ」というお約束があるから。
本当の破滅なんて誰も求めていないのに、期待に応えるために破滅していく。
そういう破滅を前提に産業が続いていく。
この仕組みがある限り、彼女の成功は彼女の破滅と同義になっていくんだよな、結局。
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