81点(100点満点中)
優秀だが臆病で大人しく、所謂“優等生”的ポジションの主人公が、バレエ劇「白鳥の湖」の主役に大抜擢されたことで、過度のプレッシャーからか幻覚に悩まされるようになる。どんどん狂気に染まっていく彼女はついに本番へと向かうのだが……
美への執着と、その裏返しの、美を失うことへの恐怖。主役という立場への執着と、主役を奪われることへの恐怖。本作は様々な執着とそこから生まれる恐怖について描かれている。“恐怖”の表現として自らの体の損壊と黒鳥への変身を用いており、「ボディ・ホラー」的側面もある。そもそもバレエは足を無理やりシューズに押し込み変形させ、本来とは違う使い方をする芸術であり、本作のテーマにぴったりの舞台だと言える。現実と幻覚が入り混じっていく様はシンプルに映像として面白い。
しかし、何と言っても自分はラストの“白鳥の湖”本番シーケンスで圧倒された。主人公の“覚醒”シーンはとてもカッコいいし、破滅から生み出される究極の美を見せられた。ナタリー・ポートマンの演技も圧巻で、こういう“狂気に飲み込まれていく”系は演技を過剰にし過ぎてしまう傾向があるが、彼女は一定のリアリティを持って熱演しており素晴らしかった。アカデミー主演女優賞も納得
〈脚本〉35/45点
〈演出・撮影〉21/25点
〈音楽〉8/10 点
〈演技・キャスティング〉9/10 点
〈印象〉8/10