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ブラック・スワンのAZのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
4.2
久々の鑑賞。★4.0にしていたが、少し上がって★4.2。ラストにかけての盛り上がりが異常。夢と現実、妄想が混濁していく感じがダーレン・アロノフスキー監督らしく、今敏イズムを強烈に感じれる作品。

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ニナは美しく可愛いのだが確かに色気はあまり感じれない。だが、ラストにかけて狂気性が増す中でフェロモンが溢れ出していく。その姿を表情やダンスで表現しているナタリー・ポートマンの凄さ。

ストーリーはとてもシンプル。だからこそ演技が際立つ。

シンプルなストーリーではあるが、その表現方法、伝え方が流石の演出。最近強く思うのが、伝えたいことが例え素晴らしいことであっても伝え方が下手だと意味がないということ。逆に伝えたいことがシンプルであっても伝え方が上手いとこんなにも素晴らしい作品になる。

演目・役柄に悩む姿だけでなく、ライバル的な存在や家庭環境など、精神を追い込む要素があらゆる場面に存在し、少しずつ気がおかしくなっていく姿に説得力がある。

特に、彼女自身を強く形成した家庭環境の設定が効いている。母親の言葉や態度からどんな環境で育ちどんな子に育ったのかが伝わってくる。過保護な環境で、母親の夢を託され育ったニナ。よく言えば純粋だが、悪く言えば空っぽ。世間知らずで簡単に傷つく。

真っ白な白鳥そのものの彼女が、黒鳥を演じるために闇に染まっていくのだが、何もない彼女だからこそその闇に飲まれてしまうという。ただ、彼女はついに見事ブラックスワンになっていく。

不幸にも見えるその姿は、彼女にとっては人生で最高の瞬間で幸福に溢れていた。このアイロニーがたまらない。

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映画全体的に舞台的に表現されていたように思う。場面の切り替えやBGMの使い方など。つまりこの映画自体がブラック・スワンという舞台そのもの。特に、役を獲得した時のBGMが露骨でわかりやすかった。

自分の幻覚を見る姿を鏡や窓ガラスを使って表現、演技と現実が混濁していく姿など、この辺りかなり『パーフェクト・ブルー』を感じる。また、自分に美を見出す姿は『千年女優』そのもの。

ラストにかけての展開はもはやホラー映画でゾッとするのだが、それすら美しく見える演出が見事だった。
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