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冷たい熱帯魚のmitzのレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
4.5
1993年に起きた「埼玉愛犬家連続殺人事件」を題材にした園子温監督による名作。事件の詳細が描かれた名著「共犯者」から犯行の残虐性を克明に描いた作品です。
物語の冒頭、女性が乱暴に冷凍食品を電子レンジに投げ込み支度をする姿からインパクトがあり、そこからラストシーンまで絵力の強い刺激的な演出が続きます。
そして豪快で品がなく老獪な矍鑠たる中年男 村田。親切心を装いながら相手に忍び寄り犯行に巻き込む極悪人でありながら、どこにでも居そうなおっさんが企てる卑近の悪。そして洗脳され簡単に股を広げる女たち。その暴力と性的興奮がシームレスに繋がっている凶暴な人物像をでんでんが無双状態で演じ切ります。
「ボデーを透明にする」という死体を解体する行為。その骸に謝罪をしたり暴言を吐いたりするブラックユーモア的な要素も物語に抑揚を与えています。
作品自体もそうですが、妻(神楽坂恵)に激しい濡れ場を何度も演じさせる園子温監督のメタな異常性も相俟ったエログロ作品の最高峰。「人生は痛い」という教訓めいた不穏な着地も含め、これこそ狂気です。

ご存知の通り、園子温監督は罪を贖うため現在自粛中。そして山川穂高(ソフトバンク)は今日もホームランを打ちました。
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