レインウォッチャー

テイキング・オブ・デボラ・ローガンのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

3.5
夏ゆえにホラー強化週間part3。

「記録系」ホラーにはだいたい肩透かしを食った思い出しかないところ(ブレアウィなんとかクトとか、パラノーなんとかビティとか、コンジアムとか)これはなかなか良いぞ。…とはいっても、中盤ごろから早くも記録系であることはツッコミの温床にしかなっていないのだけれど。

アルツハイマーかと思ったら実はオカルトだったかも、という筋で、おばあがだんだん狂っていく様子の追跡を中心にお話が進んでいく。なによりまずこのおばあ(ジル・ラーソンさん)の体当たりすぎる演技に賞賛を禁じ得ない。お若い頃はさぞかし眩かったのであろうと思わせるその品のある、かつちょっとお高そうなルックスが絶妙でありながら、異食系から脱衣系まで迫真のネタを魅せてくれる。ドキュメンタルに出たら間違いなく即優勝である。人間ってこの歳になってもこんなチャレンジングな佳境が訪れるんだなあという、まったく予期していなかった変な感動すらある。
基本的には、夜中にオイなんだいまの音は!とかなって→おばあがいないから探すぞ!ってなって→見つかって振り向いたらそこで一発奇行ギャグが炸裂するという繰り返しでしかないのだけれど、これがなかなか飽きなかった。手数が多いのと、ちゃんと序盤から最後までかけて一歩ずつエスカレートしていくのですよね。逃げ切り優勝ツインターボ師匠、みたいな感じである。

あと個人的には、作中で学者が語る「憑依とは、あまりに精神が弱り思い詰め過ぎてその対象と同化してしまうこと」という文化人類学的な解釈が興味深かった。このお話も、オカルト着地にしているもののちょっとグレーな部分を残していたりもして、悪くない余白でありました。好みは分かれるところで、尻切れで気持ち悪いという人もいるかと思われる。