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フリック・ストーリーのSariのレビュー・感想・評価

フリック・ストーリー(1975年製作の映画)
3.5
【追悼 アラン・ドロン】

36人もの人間を殺害し、当時のフランス犯罪史上最大の凶悪犯と呼ばれたエミール・ビュイッソンが脱獄、彼を追う刑事ロジェ・ボルニッシュとの実話の映画化。名優アラン・ドロンが製作・主演した刑事サスペンス。

舞台は、第二次世界大戦後1947年のパリ。脱獄した冷酷な重犯罪者エミール(ジャン=ルイ・トランティニャン)の逮捕を命じられ、その報酬として昇進を約束されたフランス国家警察局ボルニッシュ刑事(アランドロン)の語りで進む。

実話に基づく物語であり、刑事物によくある派手なカーアクションなども無く、パリの裏町を舞台としたリアリティのある演出。
本作でのドロンは、彼には珍しい泥臭い刑事役で、殆どのシーンでドロンが着用しているオリーブ色のトレンチコート姿が渋い。
ドロン演じる刑事は、ヘビースモーカーであり、地下鉄の電車内他あらゆる場所でずっと煙草を吸い続けている。また、凶悪犯を演じるトランティニャンの冷酷な風貌も魅力的だ。

クライマックスにおける、レストランでのピアノの生演奏シーンなども入り、逮捕劇に至るまでも淡々とリアル感をもって描かれた後、カメラ目線のドロンによって、エミールの最期が説明されるところなど、 ジャック・ドレー監督の演出は例え、本作のような実話であっても、重くシリアスにはならない。やや、とぼけた風情やユーモアを含んだ作品である。
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