Moomin

息の跡のMoominのレビュー・感想・評価

息の跡(2015年製作の映画)
5.0
講義内にて 小森はるか監督3作目
報道とは違う これが映画だ 記録とも似ていて少し違う そこには編集という作業があるから これがドキュメンタリーだ
今作は震災後の更地に自身のタネ屋を再開し営む佐藤さんが主人公の作品 佐藤さんの人柄と小森さんとの二人の空間の関係により作品が進んでいく
震災の当事者であることを胸に記録を英語や中国で語り継ぐ手段を選んだ佐藤さん ほとんど密着という形で 佐藤さんの日常やタネ屋さんのお仕事を撮る 一見退屈に思えるが
それがずっと見てられる
対象者の面白さは作品に出来に大きく関わることが分かる

祭りのシーンの祭りの音を消して後ろの音だけ細く流し200度ぐらいのパンをしていたショットが印象的であった それまで語られていた消される記憶 残された記憶 当てにならない記憶 今作っている記録 周りは田んぼの更地だ そして数年後には嵩上げされる事実がある 
要素が重なり合った状態であの祭りでの人々を見せる意味 そこには消されていく記録に対して抗おうとする佐藤さんと一緒に、小森監督自身もまたそれに抗おうとする姿勢が見えるショットであると考えた

観賞後小森監督とのzoom対談
 テロップを入れない演出はショットで映像を見せていくのに無駄な要素は入れたくないから 一見不親切であり しかし今作では映像作家の小森さんらしい素晴らしいショットが数多く並べられている どこか柔らかくて儚いショット 彼女が対象者を捉える姿が考え込まれているのが良く分かる
 また小森さんは対象者の身体性にどれだけカメラがついていくかが大切であると それは手の動きであったり事象に対しての反応 これを撮らなきゃ が小森さんは感覚で分かるらしい 天才か
Moomin

Moomin