ハレルヤ

ある戦慄のハレルヤのレビュー・感想・評価

ある戦慄(1967年製作の映画)
4.0
いやーエゲつない映画。
深夜のニューヨークの地下鉄を舞台に、凶悪な若者2人がその場に居合わせた乗客たちを恐怖のドン底に叩き込むサスペンススリラー。

冒頭の10分で挨拶代わりと言わんばかりに暴力の限りを尽くす若者2人。そこから後に運命の車両に乗り合わせてしまう乗客たちの人間模様を、約40分に渡ってじっくりと描き、そして映画全体の半分が過ぎた辺りから、一気にフルスロットルする勢いで展開される文字通りの戦慄。

言葉で行動で、あらゆるやり方でその場にいる乗客たちを老若男女問わずいたぶる2人。誰も途中で降りられず、反撃もろくに出来ずに翻弄されるしかない極限状態。最近の映画で言うところの「デトロイト」に近い雰囲気。

見てて「ファニーゲーム」を思い出すような胸糞悪さを感じていました。この作品がデビュー作とは思えないほどの狂人っぷりを披露するマーティン・シーンと、トニー・ムサンテのイカれっぷりがとにかく圧倒的。

乗客たちも何で皆見て見ぬふり状態なのかという事に関しても、最初は憤りを感じましたが、もし自分があの場に居合わせたらと考えたら、そうも言っていられない。

相手が何か武器を持ってるかもしれないし(実際ナイフを持っていた)、殴り合いで形勢不利でも誰か加勢してくる雰囲気もほぼない。あの現場はまさにリアルな状況を表していたと思います。だからこそゾクゾクする怖さが伝わってくる。

あのラストシーンも色んな意味で心に深く突き刺さる名シーン。ただの後味悪い映画で終わらせない深みを感じさせてくれます。複雑な情勢下であった60年代のアメリカだからこそ作れた秀作。
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