ある戦慄の作品情報・感想・評価

「ある戦慄」に投稿された感想・評価

或る夜、地下鉄の同じ車両に乗り合わせた人々が、労働者の風体をした粗暴なチンピラ2人の嫌がらせに遭ってしまう恐怖を描く傑作劇。冒頭のロケ撮影で各乗客の性質を紹介するくだりや、その現実味のある会話の内容からは卑近な生活臭が漂う。近代的な都会の縮図と病理を、電車というワン・シチュエーションで見事に切り取った社会派ドラマである。
根源的でリアルな不快さを感じるような場面を赤裸々に映し出し、現代人の誰もが抱えているが、しかし認めたくない脆さ弱さを、これでもかと見せ付けられる。自分が同じ状況になったとしたら、そのとき取る行動は乗客の誰かに当てはまってしまうだろう。
夜中に電車に乗っていると、電車の中で酔っぱらいが暴れたり、調子に乗ったチンピラが隣の客に絡んでいたりする姿を目にする機会は少なくないと思う。そういう時は、そのうち静かになるだろうし誰かが注意してくれるだろうと多くの人は何も口を出さない。見かねた正義感の強い人が思いきって口を開くと、大抵そいつは逆ギレしてきて、注意したはずが勢いに圧されたその人は、自分が社内の注目を浴びたことに委縮し小さくなってしまう。同じ空間には、自分は関係ないと無視を決め込む奴がいるし、その振る舞いに憤っているのに立ち上がる勇気がない奴がいるし、注意したいんだけど俺は弱いから怖いからと悶々と心の中で言い訳をする奴がいるし、俺だったらもっと上手くやれたのだけどねとでも言いたげなすかし顔で事の顛末を他人事のように見ている奴がいる。誰も助けない。そうなってしまえばバカは強い。勝ち誇りながら余計に調子付き、もうそこで息を吸うだけで人間が腐っていくような瘴気のようなものを辺り構わず振りまいてくる。その空間そのものを、嫌な場所へと作り変えはじめるのだ。その手助けをしてしまっていることに誰も気が付けないままに、目的地まで腐った空気に肺を毒され続ける状況が続いてしまう。実に不健康だ。
本作では、そんなシチュエーションで露になる人間の無力感、敗北感、頼り無さ、不甲斐無さ、失望、怒りなどが容赦なくモノクロのフィルムに描写され、細かい台詞や表情、仕草まで、人というものを実に良く観察している。
実のところ、人は「他人が傷付く様子」をみたくてたまらないけど、同時に「自分が傷付くこと」を何よりも恐れているということがよくわかる。人が傷付く様子が見たいけど、自分が傷付かないようにするためには、人を傷付けないようにするしかない。そうやって渋々劣情や衝動を抑えている状態を、理性とか、良識とか、社会的規範とか言って、いわゆる道徳ってことにしているのだけれど、人間が進化の果てに掴んだ道徳というものは、利己的な打算でしかなく、他人を慮るためのものではないのかもしれない。社会一般的に「良いこと」とされる行いは、一見悪意が無いように振舞う自制本能でしかないのだろうか。そんなことでは純度の高い悪には、とるに足らない個人の善意などで拮抗できるはずもない。そんな身も蓋もない文明批判か?いや、道徳とは内的要因ではなく行動によって示されるとする人間賛歌か。見る者に揺さぶりをかけてくる映画だ。
事なかれ主義のツケが回ってくる恐ろしさ。この映画は日本にこそ必要では?
密室の使い方に惚れ惚れ。
寿都

寿都の感想・評価

4.7
インシデントというよりじゅうぶん重大事件だと思うけど、反社会性人格者に対する、インシデントに対する対処策は社会みんなで注力していかないと。虐め問題もそうですね。
柔術の心得のある男性がひとりでも増えてくれ。ここまで最悪な条件下は今時ないだろうから、ほんの少しの勇気と知恵(周囲の男性と協力しあう、チンピラとの心理戦)と筋力を、頼もしい日本男性の皆様には日頃から用意していただきたい。多分イメトレのために映画はある。その結果の自信はオーラとなり、犯罪の抑止力になるだろうし、女性をドキドキさせてくれます。

車両内の事件よりも、前半長々と描かれる人物紹介の方もキツい。特に三組の夫婦と一組のカップル。怒りを制御できず、俯瞰的に人の気持ちを考えられない男たち。こんなシーンで、「私が大人になって耐えればいい」(最悪なのは私が悪いと洗脳されてしまうこと)という態度を女はついとってしまうが、それでいいのだろうか。間違った言動は許さない、我慢しない。それが自分のため相手のためだ。
日常で生まれた悲しみや疲れが波及し、社会の冷酷な空気となり犯罪者を育ててしまうとも考えられた。あれだよ、割れ窓理論。まずは自分に優しく。
67年にこの人間心理の掌握ぶり、感服しかできねえな。圧倒的衝撃の傑作。

他人はどこまでいっても他人というか。
たとえ同じ空間に居ようが同じ苦しみを受けて居ようが他人なんだよな。
少しでも関与すると、これ以上ハマると、自分に更に不利益がのし掛かると考えたらそりゃこの乗客みたいになるよな。
哀しいけど、兵隊さんに一瞥くれただけでもまだ人として堕ちきってないよ。もがいてた奴は確かに居るよ。

っていうのもいざ自分がこういうシチュに置かれたら当たり前だけど同じになるので、その言い訳と免罪符をレビューに書き換えてるだけですね。
私はいじめの傍観者を非難する風潮が許せなくて、傍観者も同時に被害者だと思ってるからこそ、本作の事なかれ主義を貫く人らにも同情しか出ないわけです。間違いじゃない。人間なんだもの。私なんだもの。
防衛本能。正しいと思おうぜ。そうでないとやってられねえよこの世界。

まあそもそもあのドチンピラが悪いわ(台無し)
otom

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4.6
電車の中で起こったら嫌な事ランキングでぶっちぎりで一位になるであろうシチュエーションを映画にした一本。深夜の電車に乗り合わせた人々の中にトニー•ムサンテと若き日のマーティン•シーンの最悪のDQN2人組が乗ってきたお陰でお通夜会場と化した車内。嫌な空気全開で突っ走る状況を打開したのが田舎者のオクラホマ男と云った辺りも面白い。傑作。
Katongyou

Katongyouの感想・評価

4.0
これは凄かったなぁ。。画面から目が離せなかった。これゲリラ撮影なのか。。悪役2人もそりゃ見苦しいものだったけど、乗客2人の喧嘩も見苦しいものに見せてく腕前は上手いのなんの。で、同時に自分もこの空間にいたら??と問題提起もしてくるというね。最後のラストの後ろで起こる取り押さえが一番戦慄しちゃったかも。。マジで??っていう。後、最初にかかる音楽は誰なんだろう??超かっこいいんすけど。。
popo

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4.3
マンハッタンへ向かう電車へ怒りや不安・寂しさ等をもった者が乗り合わせてゆく。やがてその中の2人のチンピラは、無抵抗な乗客のひとりひとりに難くせをつけ始めるのだが。。。

自分の醜い部分を見せられている気持ちになり、自分自身を改めて問うイイ機会になった。
NYの地下鉄の同じ車両に乗った乗客達が、オヤジ狩り帰りの不良2人に絡まれまくり、降車することもできず、恐怖の旅を強要される社会派密室スリラー。60年代後半のモノクロ映画。不良のかわいい方が当時新人だったマーティン・シーン。当時の危険なNYの世相や社会のギスギスした嫌な空気がそれぞれ訳ありな登場人物たちの人間模様を通して浮かび上がってくる。まぁ、今なら乗客みんなで写メと動画撮ってSNSにアップして社会的に抹殺できるんだろうけどなー。
2019.1.20 DVD(字幕)
深夜のニューヨーク、高架の上を走る地下鉄。『フレンチ・コネクション』(1971)などでお馴染みの電車。
そのうちの一つの車両に実に様々な人々が乗り込んでくる前半。
若いカップル、子連れのファミリー、老夫婦、ゲイ、黒人夫婦、軍人、酔い潰れたオヤジ…

「さあぁ~て、これだけ集めてどう料理してくれるのかな?」
最後に乗り込んで来たのがチンピラの二人。
「さあぁ~てどのように引っ掻き回してくれるのかな?」
と彼らが乗り込むまでは興味津々の展開でした。

結末は酷いものです。
見て見ぬふりを観てもねぇ…
気分が晴れません。

ジャケットが何故かカラーですが白黒作品で深夜のニューヨークを走る地下鉄が実に魅力的に撮れていていただけに残念な後味でした。

マーチン・シーンがチンピラの一人としてスクリーンデビューを飾っています。
随分な役で登場して来たものです。
Rosso

Rossoの感想・評価

4.0
フォロワーさまがレビューしてるの見て、「あ、これ絶対僕見なきゃいけないやつ」センサー発動したので視聴へ。

は〜〜〜なんやこの完成度。
胸糞皮肉が際立ちすぎている、せっかく“5パーセントの奇跡”で人間って素晴らしい!みたいな前向きな気持ちになったのに、またこれ人間に生まれたことが恥ずかしい...ってなるやん...

冒頭のジョーとアーティの横暴な振る舞いで開幕殺意100%よ、仕事やプライベートのよく分からないモヤモヤした気持ちとか全部殺意に上書きよ強烈。

約半分使う乗客背景描写の後の密室電車どちゃくそワールドはほんとこれみなさん仰る通り社会の縮図であり人間の弱さをまじまじと見せつけられましたね。
計算され尽くした乗客の種類及び質と動けない醜さや下手な動き方やもうもうもう見てください。笑

いやしかしこれ何年前に撮られた映画よ、白黒だぜ白黒。
半世紀経ても皮肉さが沁みる〜って本当に人間という生き物の限界を感じますね。テクノロジー発達させてもお前ら自身の本質は何一つ変わらないなって。

はあ〜〜〜〜〜絶望(褒め)
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