桃々井かおり

透明人間の桃々井かおりのネタバレレビュー・内容・結末

透明人間(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

冒頭、セリフ無しで展開する、主人公が寝ている夫を残し、妹と車で家から計画的に逃げ出す緊迫感のあるシーンの完成度にまず期待感が高まります。

照明やカメラそのものが充実していて、こう書いては何だけど、”インスタ映え”するような画質が続くので、何か上等なサービスを受けているような気にさえなってくる。(インスタやアイフォンが高級かは疑問の余地があるところだとは思うけど、それぞれが与えた21世紀の視覚世界への影響は映画ジャンルに限らずあると思うし、とにかく素人目線では見た目に気持ちがいいのだと言い切らせてもらっちゃおう)

夫から逃げ延びて、セクシーな男性警官とその娘が同居する家へ身をひそめる主人公。脱兎の理由はどうやら夫のDV(過度な束縛)らしい。そしてそのうちに知らされる夫の自死と莫大な遺産の相続。
ようやくの安堵もそこそこに、透明人間からのファーストコンタクトがまず観客に、次いで主人公に襲いかかります。

姿は見えないけど、絶対にそこに”誰か(夫)”が居た!訝しみ訴える主人公ですが当然理解されず、その間も姿の見えない”誰か”からの嫌がらせは続き、段々と周囲から孤立、追い込まれていきます。
「絶対に自分(主人公)のせいじゃないのに、誰かの嫌がらせで周りから拒絶されていく」、この辺の絶望感、観客の焦らし方のしつこさもこの映画の特徴の一つです。自分がもしその立場に置かれたらと思うとめちゃちゃくちゃちゃに嫌なあれ、あれが繰り返されます。

そして、ひとり残された家で透明人間との直接対決へ。ペンキを浴びて一瞬輪郭が明らかになる透明人間の、その気持ち悪さは見もので、続けざまに示される「透明であることの理不尽ともいえるアドバンテージ」も加わってとっても胸糞の悪いシーンが続きます、めちゃ最高です。

なんとか逃げ出した主人公は、打開策を探るべく(何か感づいていたとも取れます)Uberめいた車で、冒頭で逃げ出したあの夫の豪邸へと向かい、ついにその秘密にたどり着きます。

”透明人間モノ”は透明化に至る課程やディテールが醍醐味のひとつだと予想できますが、今作では光学技術の最前線にいる夫が作り出した、ハイテクノロジーによる「スーツ」が採用されています。
不気味に黒光りするレンズが無数に繋がった透過スーツは集合体恐怖症罹患必至の出来栄えで、物語が進んでゆくにつれ、スーツ本来の姿が現れる頻度も高まり、その度に観るものにドロッとした感触を植え付けていき、めちゃくちゃ楽しいです。おでだけじゃないはずだ!

夫の透明化の証拠を掴んだ主人公は、嫌がらせで仲違いしてしまった妹をなんとか呼び出し、事の次第を説明しようとしますが、、、最悪な事態に発展してしまいます。作中最高と言ってもいいくらいの、爪の間に針を差し込まれるような不快感にニヤニヤが止まりません。どこまでも落ちていく主人公!ここまで来たらもっとやっちゃってほしい!

…と、ここまでつるつるとそうめんを啜るように書いてきてしまいましたが、続きは是非作品でお願いします!
この後さらにせ~あけ(最悪)な事がよ……起こっからよ……うぷっ…最高


その他の透明人間モノを見てみたいとも思えた、カルチャー好きな知り合いなんかにレコメンドしやすい、”気持ちよく悪酔いさせてくれる”良作でした。
オヌヌメです。

スコアのほうは透明にさせていただきやした。
桃々井かおり

桃々井かおり