シミステツ

T2 トレインスポッティングのシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

20年ぶりにスタッフが再結集、アツい。

服役中のベグビー、遅刻を極め失業、家族にも愛想を尽かされヘロイン漬けのスパッド、ゆすりと売春を生業にするシック・ボーイ、そして大金を持ち逃げしてエディンバラへやって来たレントン。

自殺未遂のスパッド、子どもができず仕事もお払い箱、離婚となり家を出ていくレントン。

あの頃からロクな人生を歩めなかった大人たち。
こうなってしまったら後戻りはできない。自分は変えられない。それでも前を向いてこれから先の未来を足掻く。

ボインの戦い、スコットランドのプロテスタントにカトリックは全滅の歌のハマり具合ヤバい。

Choose Life.
現代をアンチテーゼするレントンかっこいいな。このパンチラインがこの映画の強さを決めたし、このメッセージがあるだけでめちゃくちゃ評価できる。そして寝取るとくる。最高だ。

「1980年代の薬物撲滅キャンペーンの標語さ。よくパロってた。たとえば”選べ”ブランド物の下着をな、むなしくも愛の復活を願って。バックを選べ。ハイヒールを選べ。カシミヤを選んでニセの幸せを感じろ。過労死の女が作ったスマホを選び劣悪な工場で作られた上着に突っ込め。フェイスブックやツイッターやインスタを選び赤の他人に胆汁を吐き散らせ。プロフ更新を選び”誰か見て”と朝メシの中身を世界中に教えろ。昔の恋人を検索し自分の方が若いと信じ込め。初オナニーから死まで全部投稿しろ。人の交流は今や単なるデータ。世界のニュースよりセレブの整形情報。異論を排斥。レイプを嘲笑 リベンジポルノ 絶えぬ女性蔑視。9.11はデマ。事実ならユダヤ人のせい。非正規雇用と長時間通勤。労働条件は悪化の一途。子供を産んで後悔しろ。あげくの果て誰かの部屋で精製された粗悪なヤクで苦痛を紛らわせろ。約束を果たさず人生を後悔しろ。過ちから学ぶな。過去の繰り返しをただ眺め手にしたもので妥協しろ。願ったものは高望み。不遇でも虚勢を張れ。失意を選べ。愛する者を失え。彼らと共に自分の心も死ぬ。ある日気づくと少しずつ死んでた心は空っぽの抜け殻になってる。未来を選べベロニカ。人生を選べ」

2はヘロイン「中毒」ではなく、ノスタルジー中毒。SNSなど誰もが何かの中毒である中で、人生を、過去を選べなかった人たち、それが彼ら4人。過去に固執せず、未来を見つめるには。中小企業向け融資の10万ポンドもの大金を持ち逃げするベロニカはブルガリアの移民であり、まったく新しい、次世代の象徴。未来は誰かに託すことはできる。

小学生の頃、未来が開けていたと話すレントン。
ハンマーでぶち破り首を出すシーンは『シャイニング』のオマージュだね。全体を通して印象的なカットで映像をストップさせる撮影技法(編集)がおもしろい。過去に固執しすぎたベグビーがバッドエンドで、過去を清算して小説にしたスパッドがおそらく日の目を見たであろうシーンがラストにあり、過去に固執しないほど明るい未来が待っているのだという示唆に富んでいた。