つかれぐま

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルのつかれぐまのレビュー・感想・評価

4.0
23/7/6@新宿ピカデリー❶

【素晴らしきコーダ】

『スターウォーズ』『ブレードランナー』では犬死して終わったハリソン・フォード。ウルヴァリンや孤高のレーサーの散り際を男臭く描いてきた監督ジェームズ・マンゴールドがその無念を晴らしてくれた。スピルバーグの<4楽章の交響曲>の最後に添えられた<コーダ>。あえて第5楽章にしなくて正解じゃないかな。

賛否両論のようだが、否定派はおそらく『クリスタルスカル』も好きじゃないだろう。前作を「やり過ぎ」と反省するどころか、今作は堂々とそれ以上のトンデモ展開を用意する。そしてその展開こそがインディの最高の花道につながっていく。私は『クリスタル』肯定派なので溜飲が下がった思いだ。

演技賞とは無縁だったけど、ハリソン・フォードは本当にいい俳優だなと改めて思う。これで引退するわけじゃないけど、一応の花道が出来て良かったよ。終盤の「あちら」へ行ってからの演技は特に素晴らしく、ついにジョーンズ教授の夢が叶ったことが嬉しかった。あのまま残して欲しかったような気もするが、そこはやはり現代の映画。そんな勝手を女性は許さないという着地も流石。「彼女」と再会した時のインディの絶妙な表情(嬉しいのか、嬉しくないのか)。今度こそインディは「飼い馴らされる」のかもしれないがそれも悪くなかろう(笑)という後味。同監督『フォードvsフェラーリ』の主人公妻にも通底する女性の強さ。

反戦色、グロさ、ヴィランのアク、その辺はほどほどに抑え、あくまでインディ・ジョーンズという一人の「学者」の終活に焦点を当てているのが良かった。