地獄突きビグザム

3月のライオン 前編の地獄突きビグザムのネタバレレビュー・内容・結末

3月のライオン 前編(2017年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

 中学生で将棋のプロ棋士としてデビューした桐山零の青春映画。
桐山は幼き日に両親を交通事故でなくし父親の友人である幸田に育てられ、里親になった幸田は将棋のことしか考えておらず、自分の子供の歩・香子と共に零をプロ棋士にさせるために育てる。零はその後、めきめきと将棋の腕を上げていき頭角をあらわすが、歩と香子は伸び悩み幸田にプロ棋士になることを断念させられ家庭が崩壊していく。家庭が崩壊していく様を見た零は幸田の家を飛び出し1人暮らしをすることになる。その1人暮らしの中の川本家の面々や他の棋士に出会い交流していくことで零自身も成長していくという話。

 勝手に名づけるならリバーサイド青春ものというのか、学校・家庭・仕事すべてにおいて、その位置を確立できない、零はいままで家族・青春をなくして生き残るために生きた人間だからね。まさに本流ではなく川岸にいる若者の青春映画かな。
 
 原作は読んでいる。羽海野チカの人気漫画の映画化だが私はこの作品の映画化は難しいと思っていた。
 
 なぜかというとその設定ゆえに情報量が多いからである。

 まずこの作品は零は何物にもなれない人間として描かれている。食うために将棋が好きと嘘をつき棋士になり本当の意味で将棋に人生をかけていないし、川本家は疑似家族で家族ではないし高校に通っているが、友達はおらずなじめない。また幸田の娘の香子とは現在の境遇は似ているのだが、お互い分かち合えないといった始末。この作品3つの零の世界が存在し、交互に零にぶち当たってくるので話の情報力が極端に多いのである。

 漫画やアニメは1話1話で話を一回遮断できるので見ている人も情報を1話で整理できるのだが、映画は2時間流れ作っていくので、この3つの世界をつなげればいけない。そうすると原作通りだと情報が多く整理しずらい。しかも漫画では主人公などの心境を文字にしていることが多い。映画ではそれはあまりできない。やりすぎると説明になるからね。

 それをする為には3つの世界、高校生としての零・棋士としての零・孤独な人としての零の3つのうち1つくらいに主軸を置くことになると思った。
今作では棋士のほうに置いたと思う。

 将棋という世界で零はその未熟さを出していくのだ。この作品はテーマは未熟であることと思っている。だが登場人物すべて未熟であるがその問題に向き合う姿勢みたいなものが魅力だと思う。
 
 それが出ているのかいえば、まあキャスティングがよかったですね、特に島田はよかった。それなりに将棋を打つシーンも聖の青春ほどではないが棋士っぽくみえました。

 すこし残念なのは川本家でのシーンが少ないことかな、川本家の普通の家族の生活と自分の生きた世界が違うことで零自身もすこし苦しさなどを感じたりするのだが、それはあまりなかったね。でもしょうがないと思う。
入れすぎたら整理がつかなくなるからね。

 後半はそのまま棋士として川本家にいやされながら成長していってもらいたい。川本家の問題をいれたら本筋がぶれてクチャクチャになると思うよ。