風の旅人

愚行録の風の旅人のレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
3.5
人は物のように「何か」であることに自足できず、「何者か」に憧れ、「何者か」になることを夢見る。
しかし誰もが思い描いた自分になれるわけではない。
作中に出てくる「日本は格差社会ではなくて階級社会」だという言葉。
この物語が表しているのは、その階級社会の闇である。

冒頭のバスのシークエンス。
田中(妻夫木聡)は他の乗客にお年寄りに席を譲るように言われる。
席を譲った田中は足が不自由なふりをする。
この「愚行」を皮切りに、次々と描写される人々の「愚行」の数々。
そこには他者にどう見られるかという意識が働いている。
見栄、プライド、嫉妬。
他者という鏡を通して見えてくるその人の人間像。
自分自身の「愚行」を振り返った。
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