ひでG

92歳のパリジェンヌのひでGのレビュー・感想・評価

92歳のパリジェンヌ(2015年製作の映画)
3.8
埼玉映画ネットワークの上映会で鑑賞。

私もこの上映時の殆どのお客様にとっても、他人事とは思えないお話。
身につまされ過ぎて、両親のこと、そして遠くない自分の明日を思い浮かべながら観た。

92歳のマドレーヌの日記が痛々しい。
「運転する、階段を上る、着替える、」など、できなくなったことを記している。

そう、私も含めてこの歳から、できることが一つずつ減っていく。

仕方ないよ、と諦めて、それと折り合いながら生きていくのだろうけど、、

マドレーヌは、家族が揃った誕生パーティーで、2ヶ月後に命を絶つと宣言する。

当然、家族は、大反対し、怒り出し、理解しようとしない。

そんな中で、ひとり娘のディアーヌだけは少しずつ、母に寄り添い、彼女の苦しみを深く考えようとする。

尊厳死、超高齢化か進む日本でもこの問題は避けて通れない。

僕の周りの老人たちの「生きるのが辛い。早くお迎えが来て欲しい〜」なんて嘆く声を聞く事も少なくない。

運転中に操作方法が分からなくなり、途方に暮れたり、家の中で一人で立ち上がれなくなったり、日々、できなくなることで
崩れていく自尊心と明日への不安。

特にマドレーヌのように、強い自分を保って生きてきた人ほど、他の人に頼りたくない、迷惑をかけたくない、という気持ちが強いのだろう。

タイトルやポスターのイメージとは違い、

迫り来る死とどう向き合っていくべきか、
マドレーヌの決断を自分は支持できるか、
家族だったらどうするだろう?
と、待ったなしの問題をズバッと提起してくる。

私自身はまだちょっとだけ時間の猶予かあるとは思うけど、いつ病に倒れるかも分からないし、マドレーヌと同じように、自分も誰からも期待や必要とされなくなった時、生きよう!というチカラが縮んでいくかもしれない。

だから、この映画でもっとも感動したのは、マドレーヌが助産婦としての経験を生かして、出産を助ける場面だった。

さて、現実はどうなっているのだろうか、
日本では認められていない尊厳死だが、
オランダやベルギーでは、そもそもの定義自体か異なるようだ。

日本での尊厳死は、延命措置は取らずに自然に死を迎えることを指しているが、欧州(この映画でも)では、投薬など安楽死に近い場面も指すとのこと。

いずれにしても、自分事としてとても考えさせられた映画だったと同時に

重いテーマだが、感動や深刻さに極端に寄らずに、とてもバランスの良い雰囲気の良さ、
品の良さを感じさせてくれた。
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