ひでG

碁盤斬りのひでGのレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
4.4
大満足!いろんな面でとても高水準の映画だと思いました!

良い作品に出会った時の帰り道の充実感。とても美味しい食事をした時のような心の満足感を感じながら自転車で清々しい5月の風を切って家路に向かいました。

良い作品か否かは(まあ、その時の心身の体調にもよりますが)観ている間の没入度でも測れる気がしています。本作は2時間、ほぼ現実のことを忘れて、映画の世界にすっぽり入り切っていました。
先週観た「猿の惑星」は所々不意に現実が蘇ってきて、「おっと、、」と慌てて映画には切り込もうと努めていました。

元は古典落語だということですが、そこから二重構造のお話に膨らませていった脚本の加藤正人さん、見事です!

草彅剛演じる柳田格之進の碁に心打たれた萬屋源兵衛(國村隼)との交流とある事件での確執。
格之進がなぜに浪人の生活を送っているか。
この二つの出来事が後半並行して進んでいき、それがクライマックスで時間と場所が一気に集結していく。エンタメ映画としてもこの満足感!面白過ぎる!

僕は碁の知識が全くないのですが(それがあったら最終盤の決戦ももっと楽しめたのに、、)
碁が大切なモチーフになっていることは分かります。
白黒が同じ碁盤の中で相交わる囲碁。
白か黒か、白VS黒の世界の中で、時に白だと思っていたものが黒だったり、黒が白に変わったり、碁盤の上は、まるで人生のようだ。

清廉潔白な格之進。彼が仇として追い詰める斎藤工演じる柴田兵庫。
普通の仇討ちなら、白と黒がはっきり決まっているんだろうが、ここでは兵庫が突きつける清廉潔白な格之進によってもたらされた不幸。
だから、ラスト付近で今までの格之進では考えられなかった行動にでるのだと思う。

嫌疑をかけられ、約束を遵守を迫る格之進は、謙虚で誠実な白い彼が、死を迫る黒の存在に激変する様、まあ、草彅剛の演技の幅にも驚かされる。

草彅剛のことはまた後で触れるけれど、こ冷蔵庫ほど出ている演者が皆素晴らしい映画も稀だろう。

娘役の清原果耶、あの健気さと武士の娘てしての凛とした姿。

「鎌倉殿」以来大ファンになった中川大志!やっと名監督の元で芯のある映画で力を発揮したね!とっても嬉しい!!

國村隼や小泉今日子の安定と信頼。
出番は少ないが市村正親の貫禄。
いつもの音尾さんがいるだけで安心。
奥野瑛太、いい味出してるじゃん。
斎藤工の声、アップの綺麗さ。

そして、それぞれの名演技のど真ん中でしっかり柱となって輝き続けた草彅剛。
静も動もどの場面も画面の中央で輝いている。走っても、黙っても、怒っても絵になる。その中でも碁を打つ姿の神々しさ。
最近絶好調で全て当たり役、全て良作の草彅くんだが、これは代表作として残っていく演技だろう。

そして、それら役者の最高のパフォーマンスを引き出し、調和させていった白石和彌監督、今の日本映画のトップランナーの
さすが👍のお仕事!!

昭和の名作時代劇にも全く引けを取らない
時代劇の新たな大傑作です!
ひでG

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