R41

ドラゴン・タトゥーの女のR41のレビュー・感想・評価

ドラゴン・タトゥーの女(2011年製作の映画)
5.0

この作品の秀逸さは誰もが感じるだろう。
その要素は多岐にわたる設定だと思うが、まずタイトルを表現しているのがリズベットであり、一連の事件をジャーナリストのミカエルが記事にしたタイトルでもある。
しかし、この作品の中ではミカエルが書いた記事のタイトルは描かれていない。
第4作で初めてタイトル=ミカエルの記事のタイトルだとわかる。
そして、ミカエルの視点がこの作品の中心ではあるが、実際の主人公であるのはリズベットであり彼女の少し歪んだ人生と特質した性格が非常によく描写されている。
物語は結構複雑で、初見では面白さだけがクローズアップされ詳細部分が拾い切れない。
この作品から第2作と3作を想像するのは不可能だろう。
さて、
スウェーデンを舞台に繰り広げられる物語の壮大さを、超大富豪というスケールで描いた設定は見事だった。
ヴァンゲル一族の資産 広大な敷地と屋敷と親族の数々。
その依頼者の長老が唯一心残りだったのが、40年前に失踪したハリエットの謎を解明すること。
忽然と消えてしまった彼女の行方というとても人間らしい依頼内容もまた、大富豪という反面の素晴らしコントラストだった。
冒頭、ミカエルは裁判で負けた。
にもかかわらず長老が彼を指名したのは、その調査能力と真実を追求する姿勢だった。
「わしの心残りの調査を依頼するには、いったい誰が適任か?」
その理由もまたこの作品を際立たせる材料だろう。
超大富豪という金持ちは、その創始者は、その考え方から平民とは違うようだ。
この長老から始まった大成功の陰にある思惑
その特質した片鱗 ミカエルを指名したことで伺えるのもまた物語に深みを与えている。
ミカエルはこの物語のクロニクル的存在だろうか。
どん底から思わぬ依頼を受けることになるが、その結果は事件の謎を突き止めることに成功する。
少し面白いのは、ミカエルはミレニアム誌の共同経営者エリカと不倫関係にある。
そしてリズベットとも関係する。
この部分が日本人的ではなく、女性関係と人間的誠実さとは関係ないのかどうなのかわからないが、それは欧米人の「分けて考える」思考なのかもしれない。
ミカエルを悪い人物だとは思わないが、そういう点が人間らしさとして表現されている。
彼の視点、目的は当然事件とそれを記事にして汚名返上することだ。
ミカエルにとってリズベットという女性は信じられないほどの知性と過去と持っていて、彼女との出会いと一緒に仕事をするのは強烈だったものの、余りにも規格外なことが現実離れし過ぎていて、「ひと時の出来事」としてしか感じられなかったのかもしれない。
リズベットが最後に革ジャンを捨てるあたりにそれを垣間見ることができる。
この余韻もまたこの作品の秀逸さを表現していた。
その、リズベット
彼女の生き方というのか生き抜いてきた過去とその方法は、形を変えた「市子」のようでもある。
その規格外の生き様という設定は見事でしかない。
ここに「羊たちの沈黙」の型を感じてしまう。
物語の本筋はあくまでハリエットの失踪の謎を追うものだが、視聴者の視点はずっとリズベットから離れない。
次に彼女が何をしでかすのか見逃せない。
そのリズベットでさえ見抜けなかったパレードの写真の一コマ。
この事件は過去のもので、リアルさは過去にしかなく、表面上の写真などの資料を探ることしかできない。
失踪の謎
それ自体は視聴者にとって何らかの期待を示すものは無い。
しかし、
押し花という形によって、ハリエットの生存を期待する。
このことも物語に、依頼者の想いに寄り添っている。
この寄り添うことこそ、作家が示したかった人間性なのだろう。
失踪の謎
たとえ死んでいたのだとしても、その真相を知りたいと思うのは至極当然で、金持ちであれ庶民であれそれは同じこと。
長老はまさか生きているなどとは考えもしなかったのだろう。
あの場面の救われたような気持ちこそ、物語としての最高の形だろう。
このパッピーエンドこそこの作品の最も良かった点だろう。
それに比べて主人公リズベットの複雑な心境は、この物語をシリーズ化へと移行させる最高の手段だろうか。
さて、、
初回作もシリーズも、すべて性的異常さが挙げられている。
この問題はスウェーデンの社会問題なのだろうか?
女性に対する暴力と企業の腐敗
これを作家が取り上げたかったのかもしれない。
しかしながらこの作品は面白い。
ミステリーとサスペンスに加えて、リズベットの秘密が特に面白い。
この作品のダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ の二人が特別な存在だった。
本当に面白い作品だ。
何度も見て、ようやくレビューできた。
R41

R41