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エル ELLEのtamakinのネタバレレビュー・内容・結末

エル ELLE(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

うわー怖わ怖わ((((;゚Д゚))))

レイプ被害者の話、という視点にこだわってしまう観客を手玉に取ったようなストーリーで面白い。

普通に見るとミシェルが辛い境遇にも負けない強い女みたいな感じに見える。
確かにつよつよだけど、この女完全に色情狂のサイコパスだよ!

色んなシーンでミシェルの行動に違和感を覚えるが、違和感の正体は彼女の他者への共感の無さとか、生命に対する敬意の無さから来ている。

最初のレイプも合意の上のもの。パトリックが死に際になぜと呟くところや、最後レベッカが引っ越すときにミシェルに謝意を述べていることからも明らかだろう。
ミシェルは自身の性欲のためにパトリックを利用するだけ利用して息子に殺させている。しかもその事で自分から遠ざかっていた息子との結びつきを再び取り戻すことにも成功している。
また、犯人探しで割礼しているか、つまりユダヤ人を探している点も違和感があった。レベッカは敬虔なカトリック教徒なのだから、結婚相手のパトリックもカトリックのはず。なのにユダヤ人という点で本当に犯人探しをしているわけではないのでは?という疑問が湧いた。

ロベールとの関係もアンナと関係を持ちたいから彼を利用しただけなのではないだろうか。その事実を暴露することでロベールとアンナを破局させ、自分はアンナとの同棲に成功する。

さらに、ミシェルの父親は連続殺人で服役しているが、この事件の真犯人はミシェルではないだろうか?
優しい敬虔なキリスト教徒の父親がある日突然連続殺人を行い、家財道具を燃やす。だが、彼が燃やしていたのは娘の服。本当に血まみれだったのはミシェルなのではないかという疑念を抱かせるエピソードになっている。
普段は感情が希薄に見える彼女が父親に対してのみ強烈な憎悪を向けるのも自分の罪を知る唯一の人間だからなのかもしれない。彼女は罪を庇われた事による負い目なんてものは感じないのだろう。

飽きられたら次はアンナがターゲットだろうか。自身の性欲のために平気で殺人もできちゃうやべーやつ。墓場のシーンでラストの音楽も怖い怖い。死屍累々のミシェルの人生か。

こうやって考えるとキービジュアルも怖い怖い。
普通に話追ってるだけだと、ふーんでおわりそうだが、ミシェルの言動の違和感を考えてみるとかなり刺激的な作品。
強い女ってそういうことなのかよ、うわうわうわ~って感じで楽しめるのでオススメ。
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