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あなた、その川を渡らないでのsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
いつかくる終わりを想定してみてしまう。
おしどり夫婦と四季折々の美しい風景。


98歳の夫チョ・ビョンマンと89歳の妻カン・ゲヨル。二人は韓国の田舎村で仲睦まじく暮らす夫婦。毎日お揃いの韓服でめかしこみ、どこへ行くのもいつも一緒。秋には落ち葉を・冬は雪を・夏には水をかけてじゃれあうような、結婚70年を越えてなお新婚バカップリの仲良しぶり。
その冬、体調を崩し咳が止まらなくなってしまったチョ。昼夜問わずの妻の看病の甲斐なく、日に日に衰弱していく。ある夜、看病に疲れ、隣で眠る妻の寝顔に気づいた彼は、最愛の人の寝顔をどこまでも慈しむように優しく撫でるのだ。近い将来訪れる別れに備えるように。


最初、あまりの仲良しバカップルぶりに「ヤラセちゃう?」とゲスい勘繰りしながらみてました。スイマセン。

贅沢でなくとも豊かな夫婦の生活の一端が垣間見れたり、美しい自然風景や厳しい環境を、あるがままに受け流すようなご夫妻の生き様がかっこいい。

どうしても息子・孫世代の目線で見てしまう。
親の世話について子供同士で喧嘩したり、無意識に(育ててもらった感謝を忘れて)親をお荷物扱いしちゃう感じ、いつかきっとウチの家族でもあるんだろうなあ。
いつか親を看取ることについての覚悟だったり、いつか自分も老いて死ぬ時にどれほど幸せだったと言えるか、考えさせられてしまった。

フード理論者としては、食事シーンの豊かさにも注目。
70年以上二人のために食事を用意した奥さんと、毎食後必ず「おいしかった」と平らげる旦那さんの関係の深さ。
サマーウォーズよろしく、久しぶりに集まった親類一同が、バラバラのテーブルを繋げた食卓で食事を始めたかと思ったら、案の定ケンカが始まる感じ。
特別豪華な食べ物は出てこないのに、どれも豊かで美味しそうに撮られてる。老人会ツアーで仕出し弁当を食べる二人。弁当が冷えてあんまり美味しそうに見えなくて、きっとあのあと「婆さんの作ったやつのが美味いなあ」とか言い合ってそう。勝手に妄想して、ホッコリしました
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