双葉レイ

オクジャ okjaの双葉レイのネタバレレビュー・内容・結末

オクジャ okja(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

オクジャとミジャのドタバタハートフルコメディとして素直に見ることができるエンタメ映画としての側面もありつつ、登場人物全員の行動原理に欺瞞が感じられる不思議な映画だった。
ミランド社は食糧危機を見越して遺伝子組換えの新しい家畜であるオクジャを創った。しかし結局のところ自身のトラウマである父や姉の存在を意識した自分よがりの行動であることが少しずつ露見していく。
動物保護を謳ったALFはそういった食肉に反対し、オクジャ救出を手助けする。たしかにオクジャの境遇は可愛そうに感じるし子供(ミジャ)を悲しませるミランド社は悪に見えるしALFを応援したくなる。しかし、結局のところオクジャを犠牲にして敵地に送り込んだり、ミランドという人間を社会的に貶めるような行動を平気でするような利己主義な側面が否定できない。
そんな酷い大人たちに巻き込まれたミジャであるが、ミジャ自身も動物を食べることで生きているという矛盾を抱えている。
導入と最後で山の中で暮らす描写が出てくるが、導入では魚を食べるシーンが出てきたり、最後では鶏を飼っている描写がわざとらしく出てくる。そして、おじいちゃんと喧嘩した際のセリフでも「鶏の煮込みが好き」という情報が出てくる。
そんな動物を平気で食べるような生活をしつつ自分が好きなオクジャを助けるためには何でもする。自分が認めた対象には肩入れするがそれ以外は見殺しにするその姿勢はミランド社もALFも全員同じだ。
そんな人間が生きる上での大いなる矛盾をちゃんと描きつつも基本的にはエンタメとして楽しませるような作りになっていて、その辺のバランス感覚が絶妙だなと感じた。
自分としてはミランド社をもう少し正義寄りに仕立て上げても良いかなとは感じたが(最後の屠殺場のシーンが強くて悪者として印象が残る)、そうなるとミジャを主人公としたエンタメとしての側面が弱くなってしまうのかなとも思ったので、改めてこの辺のバランスは難しいんだろうなあ。
あ、ジェイクギレンホールは最高だった。
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