ダイヤモンド

しゃぼん玉のダイヤモンドのレビュー・感想・評価

しゃぼん玉(2016年製作の映画)
3.0
恵まれない家庭環境で育った末に窃盗傷害を重ねるイズミ。逃亡の果てに宮崎県の山奥を彷徨っていた彼は、ひょんなことから寒村で独り暮らす婆さん(市原悦子)の家に居候するようになった。婆さんとの何もない暮らしと、シゲ爺と呼ばれる老夫と山仕事をするうちに、人の温もりに飢えていた彼は人間らしさを取り戻してゆく。

「おめえはいつだって逃げることばっかり考えちょる。けど、もういい加減、自分から向かってゆく力をつけにゃあ。やればできるちゅうことは、わしが一番分かっちょる。文句をいいながらこの一週間、山仕事をこなしたじゃろ。いまのおめえに大切なことは、逃げん癖をつけることじゃ」

これは、シゲ爺の言葉。一年で最も賑わう平家落人の祭り支度にも参加し、己の居場所を見つけつつあったイズミであったが、その正体を知る者は、まだいなかった…。

ストーリーとしてはこれといって凝ったものではない。テーマにしても目新しいものではないし、驚きもない。でも、樹木希林と並ぶ、唯一無二の個性派女優市原悦子と、山村のロケーションだけですでに平均値は超えている。それに、何かに怯える野良犬のような主演イズミ役の林遣都、少々無骨ながらも情に厚いシゲ爺役の綿引勝彦の好演でとても良い映画に仕上がっています。

※でもあんな山奥で、市原悦子の叫び声を聴いたら、逆にびくりとしてしまうかも。冥府に迷い込んじまったのかと。