にしにっぽり

動物農場のにしにっぽりのレビュー・感想・評価

動物農場(1954年製作の映画)
3.8
 この作品は、革命とその後の権力の腐敗を描き、特にソビエト連邦の共産主義革命を風刺している。ここでは、映画のラストシーンについての考察を中心に論じる。
 映画版「動物農場」には、小説にはないラストシーンが付け加えられている。これは、近隣の農場から集まった動物たちが豚たちに攻め入るシーンである。このシーンが追加された理由は、いくつかの視点から考えられる。
 まず、オーウェルの原作が描くのは、権力が腐敗し、最初の理想が完全に失われる過程である。小説のラストは、動物たちが豚と人間の区別がつかなくなる場面で終わる。これは、革命後の社会が結局は旧体制と変わらないものであるという強烈な皮肉を込めている。
 一方、映画版におけるラストシーンの追加は、視覚的かつ感情的なクライマックスを提供するためのものと考えられる。映画という媒体は、視覚的なインパクトが重要であり、また観客に強い感情を喚起する必要がある。豚たちに対する反乱のシーンは、視覚的にダイナミックであり、物語に明確な終わりをもたらす。
 このラストシーンがハッピーエンドかバッドエンドかについては、観る者の解釈によって異なる。
 一方では、このシーンをハッピーエンドと見ることができる。なぜなら、搾取され続けた動物たちがついに立ち上がり、抑圧的な指導者たちに反抗するからである。これは、権力の腐敗に対する最後の希望を象徴しており、観客に対して、どんなに強大な権力も最終的には崩壊するというメッセージを伝える。
 しかし、他方では、このシーンをバッドエンドと解釈することもできる。権力が交代するだけで、根本的な問題が解決される保証はどこにもない。新しい指導者が同じように腐敗し、再び支配的な体制が築かれる可能性は大いにある。これは、革命後の社会がまた新たな独裁を迎えるという、終わりのない権力闘争を示唆している。私個人はバッドエンドと解釈するが、言い切ることはできない。
 この映画のテーマは、労働者の権利とその扱いについても深く関わっている。勤勉な労働者を象徴する馬やロバ、従順な労働者を象徴する羊たちの描写は、現実社会における労働者階級の境遇を反映している。映画における動物たちの反乱は、現実の労働運動や権利獲得闘争と重なり、労働者が団結して権利を主張する重要性を強調している。
 「動物農場」のラストシーンの追加は、視覚的な魅力を増すだけでなく、物語のメッセージをより強く伝える手段として機能している。ハッピーエンドかバッドエンドかの評価は分かれるが、どちらにせよ、観客に対して深い思考を促す力を持っている。この作品を通じて、権力とその腐敗、そして労働者の権利について改めて考える機会を提供してくれる。
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