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マンチェスター・バイ・ザ・シーのmarohideのレビュー・感想・評価

4.0
 父を失った甥と、心に癒せない傷を負った叔父の物語。全体的に静謐な雰囲気であり、寒々とした海沿いの街の冬の風景が美しい。叔父と甥という関係性しか生み出せない独特の距離感も良かった。

 細切れにされた回想シーンが現在の合間合間にシームレスに入れ込まれている。突然始まり、突然終わる過去の一場面。
 思い出すという行為の本質はこの突発性にあると思う。今現在との脈絡は曖昧で、そこに本人の意志の介入の余地はない。不意にやってきて、その痛みから身を守る術もない。否応なくそこにしばらく心を預ける感覚を上手く表現しており、演出の妙を感じた。

 フッと切れるような終わり方には少々驚いたが、時間ですら無力な傷というのは存在するのだろう。大団円よりも納得がいく結末だと思った。
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