こーべい

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツのこーべいのレビュー・感想・評価

4.7
レイ・クロックについて知るだけでなく、ビジネスや自己啓発の本質も学ぶことができる知的好奇心くすぐる経営者列伝。

52歳のさえない営業マン、レイ・クロック(マイケル・キートン)がマック&ディック兄弟が経営する人気ハンバーガーショップ「マクドナルド」と出会い、惚れ込み、それを支配して全米に展開していく一大サクセスストーリー。
レイ・クロックのことを貪欲で非情な男という風に描く一方で、彼の成功哲学も丁寧に説明しており、どちらか一方の価値観を押し付けてこない点がとても好感を持てた。

「ビジネスの要素が精密に率直に描かれている」という趣旨のコメントを村上龍氏が寄せていたがまさにその通りだった。フランチャイズ、売るためのコンセプト、本業ではなく不動産業で支配する、ハングリーな若者を集める採用活動、利益率をあげる工夫…実際にビジネスの世界で頻繁に語られるテーマが丁寧に紹介される。

彼が「なぜマクドナルドを手に入れたかったか」の理由を語るシーンが最高だった。ロジックばかり語りたがるビジネスマンは多い。だが実際のところ、根拠がよくわからないがなぜか「言いたくなる名前」って本当に重要。この話って今でもアメリカを中心としてマーケティング界隈で言われ続けている。
いつの時代も優れた経営者って直感的にこのことに気づいているもんですね。

彼がまだ単なる営業マンにすぎないとき、出張先のホテルで就寝時に自己啓発のレコードを聴いているシーンが印象的だった。あやしげなBGMが流れて潜在意識にどんどんポジティブなイメージが浸透している様子が上手に表現されていた。この映画の中で何回かこのBGMのシーンがあったが、そこを境にして彼を取り巻く環境が一変していた。
自分もポジティブな夢を持って生きていかなければと勇気をもらえた。

脇を固める役者陣もよかった。悲惨な運命になってしまったレイ・クロックの妻を演じたローラ・ダーンの終始悲しそうな演技もよかったし、粉シェイクを提案する小悪魔的な魅力を発揮したリンダ・カーデリーニも魅力的だった。