satchan

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命のsatchanのレビュー・感想・評価

4.0
試写会で見せて頂きました。
ジェシカ・チャステインの役が『ゼロ・ダーク・サーティー』でのCIA分析官役とはあまりにも違っていて、優しい妻・母の姿に違和感を感じてしまいました。ナチス占領下のポーランドで、ユダヤ人を匿う決心をしてからは彼女らしく、強さと弱さをあわせ持つ女性アントニーナを見事に演じてくれたと思います。

アントニーナは、ユダヤ人を救うために、女を武器にベルリン動物園園長ヘックを巧みに操ります。夫ヤンからの誤解にめげず、処刑されるかもしれない恐怖にも負けず、逞しく生きる使命感。相当な勇気のいる行為ですよね。こんな強い女性が実在したんですね。ワルシャワ動物園、ポーランド、いつか行ってみたくなりました。

私はゲットーの中の様子に驚きました。ユダヤ人があんな風にゲットーに押し込まれて、ひどい生活状態で暮らしていたとは知りませんでした。ゲットーというと、アメリカにおけるアフリカン・アメリカンの居住区としての知識しかなかったので、映画を見た後に調べました。この映画に描かれているように、ドイツが第二次世界大戦中にユダヤ人を強制的に住まわせた地区でもありますが、ヨーロッパでは、ユダヤ人の居住区として中世から存在していたんですね。キリスト教とユダヤ教の対立の歴史・根深さを感じました。

ヒトラー万歳と言っているヘックの精神状態、戦争で歪められたものなのか、元々人間の心の内に宿っているものなのか、人間って恐ろしい、残酷だと感じずにはいられません。最後のシーンで、優しさの欠片が残っていたのがせめてもの救い。ヘック役のダニエル・ブリュールは、ドイツの俳優さんなんですね。『ボーン・アルティメイタム』にも出てるようですが、覚えてないな…。

ヤン役のヨハン・ヘンデンべルグはベルギーの俳優さんのようです。ジェシカ・チャステイン演じるアントニーナの英語が、何訛りなのか、気になりました。わざとポーランド訛りにしたのでしょうか?ポーランドの公用語はポーランド語なのに…。製作国は英米ならそのまま、英語!で良いのではないかな…と。上映中にそんなことばかり、考えてしまいました。

実話に基づいている物語なだけに、事実の羅列みたいな感じがして、退屈してしまう感が否めないかもしれません。もう少し、ユダヤ人側の心情や、アントニーナとヤン、息子の家族愛・危機感を強く訴えるような場面が描かれていたら、印象が変わったかな…。

個人的には、多くのことを学べて、考えさせられる映画でした。宗教・人種の問題、私達人間は解決できるのでしょうか。
satchan

satchan