ちろる

見栄を張るのちろるのレビュー・感想・評価

見栄を張る(2016年製作の映画)
3.7
かつて日本にもあった「泣き屋」という職業から着想を得て描かれた物語。
昔何かの番組で韓国か中国で今もある泣き屋に、密着してたのを見たことがあった。
わんわん声を出して泣くおばさんたちに違和感を感じてしまった覚えがあるのだけど、ここで描かれる泣き屋は全く違うものだった。
主人公は売れどきを逃した女優。
姉の急死をきっかけに距離を置いていた地元に帰省して、姉がやっていた「泣き屋」という仕事の存在を知る。
プライドが高くて見栄っ張り、頑固な売れない女優を久保晴香さんが演じるのだが、嫌味のない演技で、どことなく深津絵里さんに似ていて魅力的。
内容はなかなか暗いし、普通ではない内容なのにのにまるで日常のようにリアリティがあるのも彼女の淡々とした演技のおかげなのかも。

姉の仕事を主人公の絵梨子が引き継ごう思いついたのは、恐らく都会で女優をしていた過信もあったのだと思うが、姉の上司による演技とは違う『故人を偲び、二度と会えないという哀しみの想いを伝染させる泣き屋の流儀』に触れ、プライドをズタズタにされながらも絵梨子自信も本物の泣き屋に近づいていくラストシーンは美しい。
泣き屋は他人に泣きの道を作り、故人に黄泉の国への道を作るが、絵梨子はこの仕事での成長を通し、見栄を張らないで自分らしく進むための「道」を作ったのだろうか?

三十路で、夢を諦められないでもがく独身女子の映画なんて腐るほどあるけど、なかなかこれは変わった視点で描かれていてユニーク、藤村監督と久保晴香さんにもこれから注目していきたいなと思いました。
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