真一

ウインド・リバーの真一のレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.4
 マイノリティーの人権を足で踏んづけているのは、何も知らずにマジョリティーとしての特権を謳歌する君自身なんだよー。こんなメッセージが聞こえてきそうな反差別映画。心に刺さります。

 舞台は米ワイオミング州の山奥。ネイティブ・アメリカンの少女が、レイプされた後に吹雪の中で息絶える。捜査に来たのは、南国ラスベガスに拠点を置く白人女性のFBI捜査官ジェーン。「ひどい事件。私が立件する」と息巻く。

 ところが裕福なブロンド美女ジェーンに、肝心の被害者家族は心を開こうとしない。地元の民族警察も、FBIの思惑通りに動かない。困ったジェーンは、地元に精通した訳ありな白人ハンター・コリーを頼り、白銀の世界での捜査に踏み出す。そこで見えてきたのは、白人開拓者に迫害され、荒野に追いやられたネイティブ・アメリカンたちの、絶望と怨念だった…

 本作品は、ネイティブ・アメリカンの女性と結婚し、子を授かったコリーでさえも、差別し、迫害した側の子孫である事実を鮮明に描いている。中でも、コリーがオオカミを射殺する冒頭シーンは衝撃的だ。白人がネイティブ・アメリカンを無造作に撃ち殺してきた「真の西部開拓史」を、本作品は、一瞬の銃撃シーンで表現した。胸が詰まった。

 米国社会は今も差別を克服できずにいる。でも、こうした作品を世に送り出せるところに、懐の深さを感じる。翻って日本はどうだろうか。私たちが在日コリアン、アイヌ、性的少数者などのマイノリティーを踏んでいる現実をどれだけ意識し、反省し、伝えようとしているだろうか。そんなことを感じさせてくれる映画でした。力作です。
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