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ウインド・リバーの教授のレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
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ひとつの映画として、まず冒頭から最高。
テイラー・シェリダン好きだ、という感情が湧き上がる。
雪山で起こった悲劇を想起させるオープニングからジワジワと舞台設定と、ジェレミー・レナーの味わい深さとその暮らし向きが淡々と映し出されて意味もわからず「あ、好きな映画だ」と認識する。

ジェレミー・レナー同様にある種のユーモラスさと、やさぐれた感じを抜群に醸し出すエリザベス・オルセンも、「アベンジャーズ」を彷彿させてニンマリしつつ、それぞれにホークアイでもなく、スカーレット・ウィッチでもない自頭の良さが光るような、繊細で複雑な演技力に感心する。

アメリカ先住民族たちが追いやられた寒々しさと、都市から隔絶された広陵たる「アメリカ」が、舞台設定からも湧き上がってくる。
地獄のような寒さの中に無造作に放置された死体。
「ウインドリバー」という名の集落。
FBIとハンターの関係性。
アメリカの「荒地」における秩序と暴力、をジワジワと外堀から見せていく手際が見事。

法と秩序、無法と暴力が混在した世界の中で「生き延びる」という冷徹さとそこにさりげなく挟み込まれるユーモアだったりも粋でしっかりとエンターテイメントしながらも、陰惨な暴力の連鎖と、ラストにおけるそこはかとない希望。それでいて、更に突きつけられる「もう戻れない日々」と「これから生きていく日々」の物語。
からの、映画という架空の世界から地続きに叩きつけられる「現実」。

どうしても、本作のような虚構の側から、現実を食い破る、ということに挑んだ作品はとにかく最高に好きだ。
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