ずどこんちょ

ウインド・リバーのずどこんちょのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
3.6
ホークアイが遠くから仕留める、仕留める。さすが凄腕スナイパー。いや、本作ではハンターです。

先住民保留地で起きた一人の若い女性の殺人事件。彼女は極寒の地で10km以上も裸足で走り続け、肺破裂で窒息して亡くなっていた。なぜ彼女は死ぬまで走り続けなければならなかったのか……。
そこには実際にアメリカが抱える先住民保留地の根深い問題が隠されていました。
広大な土地に捜査官がたったの6人。司法がほとんど機能しない雪に閉ざされたウインド・リバーで何が起きているのか。
私自身、日本に住んでいてアメリカがこのような背景を抱えていることなど決してリアルに感じていませんでした。
自由を象徴する国の裏側には、目を背けている歴史と現実があったのです。

歴史上の出来事というものが土地に根付いて、その土地に住む人々にも脈々と繋がっていることを実感しました。歴史は今起きる出来事と断ち切って考えることができない。
かつて極寒と静寂以外を奪われた人々がいて、大国アメリカはその上で成り立っていること。そこから起因する残酷な事件が未だに発生し、曖昧なまま放置されていること。
その事実を世界に突き付けた本作が高い評価を得たことで、多くの人の認識を変えるのではないかと信じています。